スコット・ハーヴァス シリーズ11作目。ブラッド・ソーも新作が出る度にベストセラーになっている超人気作家だけど、翻訳が止まっているのね。面白いのにもったいない。リー・チャイルドより良かったけどなぁ。
原書は22作目が今年刊行予定の長寿シリーズで、過去に早川書房が1~3作目を出した後、翻訳が途切れていたけど、10年近くたってソフトバンク文庫がいきなり11作目を出したという。スノーデンの事件を彷彿とさせるストーリーだけど、事件が起きる少し前に書かれていて、タイムリーな内容だから翻訳を出したんだろうね。原書が2012年、翻訳が2014年の刊行。先見の明があるのか、絶好のタイミングでこの話を書いたのね。
主人公のスコットの経歴なんかもちゃんと説明されていて、シリーズの途中から読んでも問題なかった。海軍SEALでの活躍を認められてシークレット・サービスに引き抜かれ、暫く働いた後、今は民間の対テロ組織の工作員をしているらしい。凄すぎる経歴で、滅茶苦茶強くて絶対死なないのは、この手の小説の主人公にはよくあることなので突っ込まないでおくとして、なかなかカッコいいキャラクターだと思う。
仲間を殺され、自分も命を狙われているけど誰の仕業なのかわからず、反撃しながら真相を探るというアクション満載で緊迫感のあるストーリーが良かった。海外のテロ組織ではなく、国内の権力者の陰謀なのが恐ろしい。アメリカなら、こんな風に有力な元官僚が大量に天下りしている、政府と癒着した会社が実際にありそうね。大企業のIBMに恐ろしい過去があったとか、蘊蓄も興味深かったし、展開も速くて中弛みもなくサクサク読めた。スコットが美女2人と共に華麗に作戦を遂行したり(両手に花で良いわね)父親のように慕う上官との絆とか、全て上手くいってめでたしめでたしの結末とかハリウッド映画のようなストーリーがやや出来すぎな気はしたけど面白かった。(陰謀を阻止した後の関係者の処分の仕方はどうかと思うけど。)