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グレイラットの殺人 M・W・クレイヴン

Dead Ground: The Sunday Times bestselling thriller (Washington Poe Book 4) (English Edition)

Dead Ground (Washington Poe Book 4)

  • Craven, M. W.
  • Constable

 

 Washington Poe シリーズ4作目 700頁超えでシリーズ最長だけど、これまでで一番面白かった。歴代のジェームズ・ボンドのお面を被った強盗団が金庫破りの最中に、ショーン・コネリーティモシー・ダルトンを射殺するショッキングな冒頭の場面からストーリーに釘付けになった。MI5が首を突っ込んでくるほどの機密が関わる大事件で、あまり書くとネタバレになってしまうけど、骨董品の密売組織に、アフガニスタンの軍事行動も絡む凄いミステリー。

 売春宿での殺人がまさかこんなスケールの大きな事件に繋がっているなんて驚愕だった。殺人ミステリーに軍事サスペンスを掛け合わせた、とんでもなく面白いストーリーで、先が気になってなかなか読むのをやめられず酷い寝不足になってしまった。1、2、3作目と読んできて、やはり1作目が一番面白いなと思っていたけど、ここへ来て真打登場という感じ。

 ポーとティリーのコンビに、アメリカから来たFBIのメロディと、MI5のハンナを加えた4人のチームで捜査に当たるのだけれど、ハンナは油断ならない相手であまり信用できないので、それが良い緊張感をもたらしていたと思う。ポーとティリーの掛け合いは絶好調で、時々話が脱線するのも楽しかった。シリーズの既刊と比べ、本作ではポーが現場の証拠を検分して他の者が気付かなかった事実を発見したり、文書の矛盾点に気付いたり、鋭い洞察力を発揮していて、ストーリーに説得力が増していた。(以前は時々やや曖昧な刑事の勘みたいなものに基づいて捜査している節があったように思う。)

 この作品ならマイクル・コナリーにも引けをとらないし、リー・チャイルドより面白いんじゃないかしら。「ポーは必死で誰かを逮捕しようと床を転げまわるにはかなり歳をとりすぎている」と書かれていた時には、あんたハリー・ボッシュより若いのに何言ってるのよ! と思ったけど、私はアクションよりも謎解きが充実しているほうが好きで、不死身すぎる主人公にはツッコミを入れたくなるから派手なアクションがなくても構わないし、M・W・クレイヴンの謎解き重視の作風が気に入っている。

 最後まで予断を許さない展開で、所謂"赤いニシン"にすっかり騙されたし、本当に良く出来たストーリーで作者に脱帽。シリーズものは途中で飽きてくることもあるけど、これは読まなきゃ損な傑作だと思う。

 

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