年末はどこの出版社も人気作家を投入してくるので、ロマンス小説も12月はリサ・M・ライスにノーラ・ロバーツ、サンドラ・ブラウン、ジュリア・クイン等、豪華なラインナップだわね。ライムブックスは例年だとリサ・クレイパスだけど、ここ数年新作を書いていないから出せなくて、代わりにサラ・マクリーンにしたのね。
S・マクリーンは人気作家だけあって、似たような話が多いヒストリカル・ロマンスの中で、設定に一工夫あってストーリーも面白いし、キャラクターが個性的で上手いと思う。このBarenuckle Bustardsシリーズも、ロクデナシの公爵が、正妻が女の子しか産まなかったため、愛人に産ませた婚外子の息子3人を探し出し、戦って勝った者を後継ぎにしてやると3人を競わせたとか、なかなか凄い設定で興味を引かれた。本作は、3兄弟のうち、公爵になれずに貧民街で密輸業を始めて財を成したデヴィルと、行き遅れの侯爵令嬢フェリシティのロマンス。
他の兄弟を裏切って公爵になったユアンをデヴィルが憎んでいるのは理解できるけれど、彼の婚約者を奪って破滅させることでユアンを罰するというのはちょっとやり方が回りくどいような。兄弟の確執に関してもっと詳しい説明が欲しかったけど、シリーズの最終作で主役になるユアンに関して謎めいたところを残しておかないといけないから仕方ないかな。この設定だと3兄弟の中で公爵になったユアンが一番複雑そうなキャラクターで興味をそそられるわね。
貧民街から成り上がったヒーローと行き遅れの壁の花ヒロインのロマンスは、悪くはなかったけど、この作者にしては普通かな。危険な香りのするヒーローは素敵で良かったし、ヒロインに錠前破りの才能があるというのも面白いと思ったけど、身分差ロマンスの割にはそこまでの切なさがなかったのが残念。とは言え、この作家は文章が上手くて会話が洒落ているので読むのは楽しかった。ロマンティックなセリフが良いわ。ユアンとグレースの話を早く読みたいなあ。