これはP・ルメートルの初期の作品で「その女、アレックス」の原点と言われているらしい。言い換えれば、アレックスほどの出来ではないということだから、気が向いたら読もうと後回しにしていたけど、読み始めたら面白くて一気読み。もっと早く読めば良かった。
主人公のソフィーは何やら精神に異常を来しているようで、時々意識がなくなり、目覚めてみるとその間に知人が殺されていたりするという。これは解離性障害とかの話なのかな?と思って読み進めていくと、第二部で衝撃的すぎる事実が!!これは怖い!いやはや、よくこんな話を書いたなぁ。初期作なので多少荒削りなところはあるけどこのアイディアはかなりのものだと思う。やはりこの作家は只者ではないな。
衝撃の事実が明らかになった後も先の読めない展開が続き、ソフィーは一体どうなるのかとハラハラさせられた。スプラッタな描写で怖がらせるのではなく、読者を心理的な恐怖に陥れ、背筋がゾクゾクするようなスリルを感じさせる、これぞ心理サスペンスというストーリー。結末も捻りがあって良かった。フランスのミステリーではこの作家が断トツで面白いと思う。