ロマンス小説感想日記

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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

海賊のキスは星空の下で ジュリア・クイン

 

 Rokesbys シリーズ3作目。本作は何とヒロインが私掠船の乗組員に誘拐されて、ポルトガル行きの船に乗せられてしまうというトンデモストーリー。でもジュリア・クインなのでそこまで恐ろしい事態にはならず、船に閉じ込められているうちに素敵な船長さんと恋に落ちるという、設定の割にはほのぼのとしたロマンス。

 この作者のヒロインは嫌味のない可愛らしいタイプが多くて良いわね。ヒストリカル・ロマンスでは、現代人の思考丸出しで、自由ガー、独立ガーと言って、結婚したがらないヒロインを描く作家もいるけど、この時代にそこまでフェミニズムに傾倒している貴族の令嬢は稀だと思うので、普通に素敵な男性と結婚するのを願っているこういうヒロインのほうが自然で好感が持てる。

 ヒーローも、わけあって私掠船の船長をしているとは言え、立派な家柄の高貴な男性なので紳士的で、無理やり船に乗せてしまったヒロインのことを気遣っている優しさが良いわ。だんだん惹かれて合っていく二人の心の機微を繊細に描いているのは流石。他愛ない会話から相手への思いが伝わってくるのよね。ヒロインの兄の思い出話にはほっこりさせられたわ。ポルトガルに着いてからも困難な状況が待ち受けていて面白かった。危険な状況に陥ってもそこまでの危機感はなく2人とも意外と呑気なのがこの作者らしいわね。英国に戻ってからの展開も楽しく、ちょっぴり切ない場面もあり、心温まる素敵なロマンスだった。次作も楽しみだなあ。

 

(追記)

サラ・マクリーンの記事に、今年はリサ・クレイパスが出なくてガッカリだというコメントを頂きましたが、クレイパスはここ数年執筆していないんですよね~。筆を折ったわけではないと思いますが、新作が読めるのはだいぶ先になりそうで残念です。そしてジュリア・クインも、このRokesbysシリーズの4作目を書いた後は、lady Whitsledownのquote集とか、コミカライズとか、ドラマのクリエイターのションダ・ライムズと共著のQueen Charlotteのノベライズなんかを出していて、オリジナルの長編小説はしばらく書いていないんですよ。ブリジャートンシリーズのドラマ化で忙しいんでしょうけどね。

The Wit and Wisdom of Bridgerton: Lady Whistledown's Official Guide (English Edition) Miss Butterworth and the Mad Baron: A Graphic Novel (English Edition) Queen Charlotte: Before Bridgerton Came an Epic Love Story (English Edition)

人気作家の新作が出ないと、ただでさえ刊行が激減しているロマンス小説の人気がさらに衰えてしまいますよねぇ・・。ライムブックスも休刊とのことで残念です。

 

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