初邦訳のスウェーデン人作家。これはVanessa Frankシリーズの2作目だけど1作目は未訳。(英語版が出ているのが今のところ2作目と3作目だけなので、1作目を出せなかったんだと思う。英語版を日本語に訳していると思うので。)スウェーデンのミステリー作家は元ジャーナリストが多い気がするけど、この人もそうらしい。読んで納得、いかにも社会派という感じのストーリーだったし、新聞記者の登場人物も出てきて、ちょっとミレニアムっぽい。
主人公のヴァネッサはアラフォーでバツイチの女性警部でかなりの美人らしい。元夫は演出家で、若い女優と浮気して離婚。ヴァネッサは前作の事件で助けてもらった元軍人のニコラスという男性に好意を抱いているっぽいけど、前作を読んでいないのでよくわからないな。前作の内容に言及している部分がちらほらあって、南米まで行った大変な事件だったらしいので、未訳なのが残念。まあでも初めて英訳されたのがこの作品なのは、内容的に北米で問題になっている「インセル運動」を扱っているからだろうね。"インセル"って初めて聞いたけど、アメリカやカナダで、モテない男が女性に対して憎悪をつのらせ事件を起こしたりしているらしい。モテない男の逆恨みって恐ろしいわ~。この作者は元ジャーナリストだからきっと綿密に取材したんだろうね。非モテ男の歪んだ心理がこと細かに描かれていて、そのとんでもなく危険な思考回路が女の私には衝撃だったわ。いや~こんな男に標的にされた女性はたまったもんじゃないわね。スウェーデンは男性のインセル率が高いとのことだけど本当かしら?北欧の男性は長身でカッコいいイメージがあったから意外だったわ。まあ皆が皆ヨエル・キナマンのようなイケメンではないだろうけどさ。ホームレスや、セクハラ、DV等、色んな社会問題を扱っているところは流石で元ジャーナリストだけのことはあるわね。女性がレイプされる事件の描写がかなり凄惨で背筋が寒くなったわ。
スティーグ・ラーソンや、アンデシュ・ルースルンド、ラーシュ・ケプレルには及ばないけど、そこそこ面白い北欧ミステリーだった。主役のヴァネッサにそこまでのカリスマ性を感じられず、キャラクターの魅力が今一つという気がしたけど、ストーリーは面白くて良かったと思う。女性のキャラクターを魅力的に描ける男性作家って少ない気がするなぁ。ヴァネッサは過去に子供を亡くしていたり、前作でも私生活に色々あったようで、1作目から読んでいたら、もう少し彼女に感情移入できたかもしれない。
そういえば、早川書房さんは karin smirnoff が書いたミレニアムの続編は翻訳を出さないのかしら?英語版はだいぶ前に出ていてNY Timesのベストセラーリストに一瞬だけ入っていたわね。原書の評判はあまり芳しくなさそうだけど、まあS・ラーソンに匹敵するものを書くのは無理ゲーだしね・・。
追記12/31
2024年の早川書房の翻訳ミステリ&NVラインナップから大注目作をご紹介!|Hayakawa Books & Magazines(β)
出版社のウェブサイトによれば、カリン・スミノフのミレニアム続編は2024年に刊行予定だそうです。