2023年のエドガー賞受賞作だけど、ミステリーというよりは死刑囚の人生を描いたドキュメンタリーのような小説だった。Goodreads choice award でもミステリー部門ではなくフィクション部門にノミネートされていて、どちらかというと文学的な作品だと思う。批評家受けが良さそうな内容なのでエドガー賞も納得だけど、個人的にはこういう文体はちょっと苦手だわ・・。
作者は詩的な文章を書いているつもりなんだろうけど、時々比喩がわかりづらくてイライラさせられた。例えばいきなり「下着の白さは、明確な暴力だ」と書いてあって、ハァ??と思いながら読み進めると、これは妊娠を恐れている女性が生理が来なくて打ちのめされるということだとわかるんだけど、こんな謎かけみたいな文章は勘弁してほしい・・。(翻訳もあまり良くないと思う。)主人公の視点のパートが二人称で書かれているのも妙に感じたし(あとがきによれば、読者を引き込んで主人公と同化させるためらしい)技巧に走りすぎて却って読みにくくなっていると思う。
430頁の比較的短い小説で、つまらないわけではないので一応最後まで読んだけど、どんでん返しがあるわけでもないし、謎解き要素はあまりないのでミステリーだと思って読むと肩透かしだと思う。それでも主人公が殺人犯になったのは生まれ持った性質からか、それとも環境のせいなのかとか、死刑制度の是非とか、色々な疑問を投げ掛けていて考えさせられ、哲学的な深みのあるストーリーなのは確かで、純文学好きな人が絶賛しそうな小説だった。万人向けではなく読む人を選ぶ作品だと思う。
Read More
私は翻訳小説をたくさん読んでいるほうだと思うけど、手当たり次第に読んでいるわけではなく割と厳選していて、新刊本を買うときはいつも原書の評判を調べるようにしている。(本国でどれくらい売れたかや、AmazonやGoodreadsの星の数、賞を取っているか等々。)これは原書がベストセラーで評価も高かったので期待していたけど、初めて読む作家なので好みに合うかわからず、ネットで試し読みもできなかったので買うのを保留していたら、地元の図書館に入荷したので借りて読んだ。自分の好みとは少し違ったので買わなくて正解だった。(集英社文庫は電子版の発売が遅いけど、それで却って客を逃しているんじゃないかと思う。)
自分で本の感想ブログを書いておきながらこんなことを言うのも何だけど、他人のレビューはあまりあてにならず、ネタバレに遭遇することも多いのであまり見ないようにしている。最近は電子書籍が同時発売になることが多いので、買う前に電子版を試し読みして、続きが読みたいと思えば買うし、ピンとこなければ買わない。話題作でも読んでみたらイマイチということはよくあるので、試し読みして自分で判断するのが一番確実だと思う。翻訳小説もどんどん値段が上がっているので、高いお金を払って好みに合わない小説を買いたくないし・・。このブログを読んでくれているみなさんも私の感想をあまり鵜呑みにせず、ご自分で判断されるのがよろしいかと。