1999年刊行の古いポケミス。デニーズ・ミーナはスコットランドのミステリー作家でこの作品でCWAの新人賞を受賞したとのこと。その後もたくさんの作品を書いていて2019年に”Conviction"がベストセラーになっているけど邦訳はこの1作のみ。コミックの原案も手掛けていて、ミレニアム ドラゴンタトゥーの女 のグラフィックノベルが好評らしい。
「扉の中」はこの作家のデビュー作なので全体的にやや粗削りな感じはしたけれど割と面白かった。女性が主人公のサスペンスで、酒を飲んで帰宅し二日酔いで目覚めると、椅子に縛られて殺害された恋人の死体が家にあったというショッキングなストーリー。主人公のモーリーンは子供の頃に父親から性的虐待を受けていて、精神病院に入院していたこともあり、そんな壮絶な過去がありながらも自分を憐れむことなく強く生きているところが良かった。ミステリーとしては、そこまですごいどんでん返しがあるわけではなく、真犯人も想定内の人物だったけど、モーリーンの過去が事件に関係していて、謎を解き明かしていく過程が興味深かったし、悪人に制裁が下される結末に留飲が下がった。
登場人物にマクなんちゃらという名前の人がやたらと多くて、やはりスコットランドだなあと。この作家もそこそこ面白くて悪くはなかったけど、スコットランドの作家のミステリーでは、少し前に読んだヴァル・マクダーミドの「過去からの殺意」のほうが面白かったな。