ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

内なる罪と光 ジョアン・トンプキンス

内なる罪と光 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

内なる罪と光 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • ジョアン トンプキンス
  • 早川書房
What Comes After: A Novel

What Comes After: A Novel

  • Tompkins, JoAnne
  • Riverhead Books

 

 2022年のエドガー賞ノミネート作だけど、ミステリーと言うより純文学的な小説だと思う。殺人事件を題材にしてはいるけど謎解きはほとんどなく、それよりも被害者の家族の悲しみや喪失、加害者に対する赦し等がメインのストーリーで、殺された男子高校生の父親がクエーカー教徒という設定なので宗教的な色合いを帯びているように感じられるところもあった。

 これは正直言って面白くなかった。670頁もあるのでだんだん読むのが苦痛になってきて途中から流し読み。この話を伝えるのに本当にこの膨大なページ数が必要なのかと作者に問いたくなる作品で、ストーリーを無駄に引き延ばしているとしか思えない。殺人事件そのものではなく関係者の感情に焦点を当てた内省的なストーリーで、内容はある程度評価できるけれど、読み物としてこれほど冗長なのはいただけない。登場人物の心の内を描いているにしては淡々とした筆致で、誰にも感情移入できなかったし、妊娠した少女の赤ちゃんの父親が誰なのかというちょっとした謎以外あまり捻りもないストーリーで、楽しめる要素が無かった。文学的なミステリーなら先日読んだ「死刑執行のノート」のほうが短くまとまっている分まだ良かったと思う。(ちなみに「死刑執行~」はエドガー賞受賞で、この「内なる罪~」はノミネート止まり。)

 早川書房はエドガー賞やゴールドダガー賞関連の作品をよく刊行しているから、これも出したのだと思うけど、出版社は刊行する作品をろくに読まずに決めているんじゃないかと疑ってしまうわ。これが本当に売れると思ったのかしら??ミステリーの読者にはウケないと思うし、純文学好きな人に刺さるところもないような・・。翻訳小説を刊行している出版社は、原書を読んで作品の良し悪しを的確に判断できる人を雇ったほうが良いと思う。

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