以下の感想はかなりネタバレしていますのでご注意を
この原書の情報を漁っていた時に、ヒロインが "human trafficking" (人身売買) の犠牲者だというのを見て、凄い設定だなと興味を引かれたので読んでみることに。ヒーローも何やら秘密を抱えているとのことだから、恐らく潜入捜査中の警官か何かだろうと思いきや、予想の斜め上を行くトンデモ設定だった!ツッコミどころ満載だけど、この作家にしてはサスペンスに力が入っていて、細かいことを気にしなければ面白いロマサスだと思う。(以前読んだこの作家のロマサスは、サスペンスは申し訳程度でロマンスの添え物という印象だったので。)
ヒロインは高校生の頃、人身売買組織に誘拐されて無理やり売春させられそうになったけれど、ギリギリのところで逃げ出すことが出来た。その時に他の女の子達を助けることが出来ず、自分だけ逃げてしまったことに罪悪感を抱いていて、そういう組織から女性を救出するために1人で活動していたところ、バーの経営者のヒーローと出会う。
ヒーローの父親は昔、妻が人身売買組織に誘拐されて亡くなってしまったことから、息子たちを鍛えて武装させ、組織を撲滅するために送り込んで戦わせている。民間人が勝手にそんなことをしていたら警察に目をつけられそうだけど、父親は大富豪で法曹界や政治家にコネがあるので大丈夫らしい。広大な敷地にある超豪邸に住んでいて執事までいるという。町のバーとスポーツジムを買い取って息子2人にそれぞれ経営させ、そこで客から組織についての情報を探っているのだとか。娘も1人いてコンピューターが得意なのでIT関係を担当している。父親は医者だそうで屋敷に自前の手術室を完備して、撃たれて負傷した息子を手当てしたり、一体どんな一家なのよ。家族ぐるみで人身売買組織に制裁を加えているとか、無理のありすぎる設定は最早ギャグのようで、リアリティは皆無だけどまあフィクションだから・・。
ヒロインの境遇から、傷ついてトラウマを抱えた守ってあげたいタイプを想像していたけど、意外と逞しくてヒーローと一緒に戦う勇ましいキャラクターだった。まあ守ってもらうだけのヒロインは今となってはもう古いし、時代の流れでロマンス小説のヒロイン像も変わってきているということね。ありえない設定に目をつぶれば、この作者比で気合の入ったサスペンスが楽しいロマサスで、ヒロインが強い女で積極的だからロマンスもかなりHOTだった。
最後に組織の親玉をやっつけたのは良いけど、死人まで出して警察にバレたらどうするのだろうと思ったら、金持ちの父親には、後始末をしてくれるお抱えのタスク・フォースがいて万事OKらしい。えぇ~、それなら息子でなくそのタスク・フォースに全部やってもらえば済む話じゃないの??とズッコケてしまったよ・・。