このシリーズは1作目の「湿地」(→感想) しか読んでいないけれど、本作はシリーズの主役エーレンデュルは休暇中という設定で、女性警官のエリンボルクが主役なので、2~6作目を読んでいなくても問題ない内容だった。
エーレンデュルが刑事としては有能だけど偏屈で私生活が荒んでいるというミステリーの主役に多いタイプだったのに対し、エリンボルクは3人の子供がいる料理好きな40代女性で、反抗期の息子との関係に悩んでいる普通のお母さんという感じのキャラクターなので感情移入しやすく、犯人を見つけようと懸命に捜査しているところが好感度大。インターネットがADSLだったり、主人公の高校生の息子がブログを書いていたりして、いつの時代の話だ?と思ってcopyrightを見たら2008年だった。
ロヒプノールを使ったレイプ事件は、欧米のミステリーでよく扱われる題材だけど、アイスランドでもそういう事件が起きているのね。関係者への聞き込みで地道に捜査し、少しずつ事実を掴んでいくオーソドックスなミステリーで、派手などんでん返しや、捻った叙述トリックはないけど、地味ながら手堅く面白い一作だった。次作でもエーレンデュルは休暇中で、彼の相棒のシグルデュル=オーリが主役になるらしい。