ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

三連の殺意 カリン・スローター

三連の殺意 (マグノリアブックス)

三連の殺意 (マグノリアブックス)

  • カリン・スローター
  • オークラ出版
Triptych: A Novel (Will Trent Book 1) (English Edition)

Triptych: A Novel (Will Trent Book 1)

  • Slaughter, Karin
  • Delacorte Press

 

 Will Trent シリーズ1作目。先日感想を書いたこの作家のデビュー作「開かれた瞳孔」が2001年で、こちらは2006年の作品。続けて読んだので作者の進化が顕著に感じられた。タイトルの "Triptych"  の如く三部構成になっていて、第一部は刑事のマイケル、第二部が刑務所から仮釈放中のジョン、第三部が捜査官のウィルとアンジーの視点で語られ、随所で衝撃の事実が明らかになる捻りのきいたストーリーが上手い。

 序盤はウィルはなかなか出てこず、アトランタの刑事マイケルのパートが続き、今回はこの人がウィルの相棒になって捜査するのかな?と思いながら読んでいたけれど、予想外の展開になってかなり驚かされた。あれは不意打ちだったわ~。十代の少女を残酷にレイプして殺し、舌を切り取るという恐ろしい殺人鬼の事件で、犯人との攻防もさることながら、狡猾な犯人に陥れられた青年の悲劇的な人生や、刑務所の恐ろしさ等、色々なテーマが盛り込まれた複合的なストーリーがとても良く出来ていて読み応えがあった。

 マイケルとジョンのキャラクターが強烈なぶん、主役の割にウィルの存在感がやや薄いような気がしたのだけれど、この作品はもしかしたら当初はアンジーを主役にするつもりだったのかな。(原書の紹介文には、マイケルとアンジーの名前は出てくるけどウィルの名前はないのよね。)先に読んだ3作目の「ハンティング」では、アンジーはかなりのbitchということになっていたけれど、本作ではそこまで悪女という感じではなく、不幸な生い立ちのせいで、男性とうまく関係を築けない女性という印象だった。屈折したキャラクターなのは確かで、ウィルのことも傷つけているけれど、アンジー自身も不幸だから同情の余地はある。ウィルとアンジーの複雑な関係が興味深かった。