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春の予感は突然に メアリ・バログ

 メアリ・バログは好きな作家なので、これまでに出たのは全部読んでる。これはハクスタブル家のシリーズ3作目で、少し前の作品だけど、5作のうちではこれが一番面白かったので、今更だけど感想を書いてみた。

 この作品は何と言ってもヒロインが人間臭くて面白い。シリーズの最初のほうの印象では、ヒロインは幼馴染で軍人の彼が求婚してくれたのに、弟や妹の面倒をみなければならないから泣く泣く断ったけど彼を思い続けてる・・みたいな薄幸設定になるのかと思っていたけど、予想と全然違ってた。そもそも幼馴染の彼氏はヒーローではなく、戦地に赴いた彼はスペインで出会った女性と結婚して、その後奥さん亡くしてシングルファーザーになり、ヒロインにまた言い寄ろうとするお調子者だった。戦争に行った先でさっさと違う人と結婚しちゃった彼氏に腹を立ててたヒロインは、その彼が帰ってきて再会したときに、強がって本当はしてないのに「アタシ婚約してるの!」と言っちゃう。まあ元カレにはつい見栄張ってしまうわよねえ。そしてそれまでに何度か求婚してくれてたけど、「お友達でいましょ」と言ってじらしてた侯爵がいるから、その人と結婚することにしようと思った矢先、その侯爵は別の人と結婚することになって大ピンチ。そういうわけで、スキャンダルで社交界から追放されていたけど、わけあって結婚する必要に迫られて夜会に来たヒーローと急遽婚約することに。この必死なヒロインの行動がほんと面白いわぁ。弟妹の面倒を見てきたしっかり者の長女だけあって、そこそこ良い人の侯爵をちゃんとキープしてたとこも流石だわね。残念ながら肝心な時に役に立たなかったけど。そして結婚を急いでいるヒーローに対し、「求愛して!それで恋に落ちたら結婚してあげる!」と言い渡すなんて、ヒストリカルにしては珍しい鬼畜なヒロインよね。ヒーローを気の毒に思ってしまったわ。薄幸なのはヒロインでなくヒーローだった!でもそこはメアリ・バログ。最初はヒーローのことを胡散臭く思ってたヒロインも、よく知り合うようになって惹かれていき、だんだん愛がはぐくまれて・・・という展開。ヒーローのスキャンダルは(実は彼は悪くないんだけど)かなり醜悪で、そういうスキャンダルを乗り越えるしたたかさがヒロインにはあるから、実にナイスなカップリングだったというわけね。

 人間臭いヒロインの言動は、現代女性に通じるところが大いにあって笑わせてもらった。「家庭の事情で婚期を逃したけど、アタシにもプライドあるし、結婚に妥協したくないわ!」みたいな。ヒストリカルなのに親近感を覚えるヒロインだった。

 ※念のため、この作家の作風を知らない人がこの感想を読んでコメディだと思うといけないので言っておきますが、メアリ・バログは情感溢れるしっとりとしたロマンスを書く作家で、この作品もいつもどおりのメアリ・バログです。

春の予感は突然に (ライムブックス)

春の予感は突然に (ライムブックス)

  • 作者: メアリ・バログ
  • 出版社: 原書房
  • 発売日: 2015/03/10
At Last Comes Love (Huxtable Quintent)

At Last Comes Love (Huxtable Quintent)

  • 作者: Mary Balogh
  • 出版社: Dell
  • 発売日: 2009/04/28

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