ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

公爵の傷痕に優しい口づけを テッサ・デア

 昔この作者の最初に翻訳された「偽りのくちづけは伯爵と」を読んだらあまり面白くなくて、事実、シリーズものだったのに1冊しか翻訳されなかったし、日本ではこのまま消えていく作家だと思っていた。でもその後RITA賞をとった「きみはぼくの帰る場所」が翻訳されて、今となっては結構な人気作家だからわからないものよね。実際「きみはぼくの~」はそこそこ面白かったのでシリーズ3作とも読んだけど、自分の中では特別お気に入りの作家というわけではないかなあ。今作の前に出ていたお城のシリーズは、あらすじを読んで何だかドタバタした感じを受けたから読んでいないので、すごく久しぶりのテッサ・デア。以下ちょっとネタバレあるかも。

 今作は、戦争で顔に傷を負った公爵と、お針子をしている牧師の娘との美女と野獣タイプのお話。身分の差があるはずなのに、あれよあれよという間に結婚して子作りを始めるふたり。テンポ良く話が進むのは良いんだけど、展開が早すぎて少しついていくのが大変だった。ヒロインが純潔じゃなかったということも、さらっと流されてるし。ヒロインをお茶に招いた女性たちも、前置きなく突然出てきたから、途中で何か読み飛ばしてしまったのかと思ったわ。でもそういうのがこの作者のスタイルなのよね。ご都合主義とは違うけど、細かいところはすっとばして、まどろっこしい説明はしない。ロマンスもセリフと行動でストレートに愛情を示すのね。実際この作品はロマンス小説にしては心理描写が少なめだと思う。心理描写がくどすぎるのも鬱陶しいけど、これだけめまぐるしく話が運ぶと、もう少し余韻があってもいいんじゃないかという気もするけど。ロマンス小説なのにゆったりロマンスに浸る暇がないというか。でも退屈する暇なく読めるのは良いし、読むうちにこのペースに慣れて2人の気持ちに共感できるようになってきて最後のほうは結構感動したかな。読んで損はない作品だったと思う。

公爵の傷痕に優しい口づけを (ベルベット文庫)

公爵の傷痕に優しい口づけを (ベルベット文庫)

  • 作者: テッサ・デア,金井真弓
  • 出版社/メーカー: 集英社クリエイティブ
  • 発売日: 2018/10/19
  • メディア: 文庫
The Duchess Deal: Girl Meets Duke (English Edition)

The Duchess Deal: Girl Meets Duke (English Edition)

  • 作者: Tessa Dare
  • 出版社/メーカー: Avon
  • 発売日: 2017/08/22
  • メディア: Kindle

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