ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

侯爵の謎めいた花嫁 ミネルヴァ・スペンサー

 新人作家のデビュー作。15歳で海賊に拉致されてアラブのスルタンに売られ、17年間ハーレムで暮らした後脱出しイングランドに戻ってきた32歳の公爵令嬢のヒロイン。スルタンとの間に17歳の息子もいる。壮絶な人生だな・・・。運命を呪って悲嘆に暮れているのかと思いきや、過去を憂うこともなく意外にあっけらかんとしているからあまり悲壮感はなかった。ハーレムでの生活についても断片的に少し書かれているだけだから、重い過去を背負って生きているという感じでもなく、父親がスキャンダラスな過去のある娘をさっさと嫁にやって厄介払いしたがっている中で、なんとか都合の良い夫を見つけようとするポジティブなヒロインだった。ヒーローは過去に2回結婚し、その2度とも妻と死別していて、妻殺し侯爵と噂され社交界でのけ者にされている。死んだ奥さんが2人とも残念な人で、結婚運が悪くて気の毒だとは思ったけど、妻殺しと恐れられている割にはそれほど怖い雰囲気もなく、ちょっとひねくれているけど普通に良い人で、主役の2人とも、この設定から期待されるドラマティックさがちょっと足りないなという印象。ヒロインは父親に結婚を急かされているため、ヒーローは娘しかいないので跡継ぎの息子をもうけるため、という理由で、お互い利益になるから結婚し、愛のない結婚から愛が芽生える過程を描いていて、衝撃的な設定の割にはオーソドックスなロマンスだった。

 ロマンスに関しては、愛のための結婚ではないとはいえ、最初から2人とも惹かれあっているし、ヒロインがハーレムにいたことから色々と積極的で濃厚なんだけど、心理面はやや表面的な感じで、もうちょっと2人の心の機微が繊細に描かれていると良かったけど、そこまで心に迫るものがなくてあと一歩だった。後半は、私掠船の船長たちと協力して、スルタンに捕えられているヒロインの息子を救出する作戦が遂行され、冒険活劇のような展開になって盛り上がるんだけど、なんだか予定調和的でやや緊張感に欠けていた気がする。登場人物の必死さがいまひとつ伝わってこなかったので、感動的な場面でもそこまで感情移入することはなかった。

 ヒロインが過酷な経験をした割には、思ったほど悲壮感もなく拍子抜けだったけど、さらっと読めてそれなりには楽しめる作品だと思う。新人作家にしてはまあまあかな。

侯爵の謎めいた花嫁 (マグノリアロマンス)

侯爵の謎めいた花嫁 (マグノリアロマンス)

  • 作者: ミネルヴァ・スペンサー,Minerva Spencer,高岡香
  • 出版社/メーカー: オークラ出版
  • 発売日: 2018/12/07
  • メディア: 文庫
Dangerous (The Outcasts Book 1) (English Edition)

Dangerous (The Outcasts Book 1) (English Edition)

  • 作者: Minerva Spencer
  • 出版社/メーカー: Zebra
  • 発売日: 2018/06/26
  • メディア: Kindle

 

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