The Cavensham Heiresses シリーズの2作目だけど1作目は読んでません。このシリーズがデビュー作の新人作家さん。プロローグは良い感じで、子供の頃、父親に拒絶されたヒーローの苦しみに、ブリジャートンシリーズのサイモンを思い出した。でも読み進めてみると、ヒーローのキャラクターは無謀なヒロインが危ない目に遭わないように救い出してくれる普通に素敵な好青年で、悲哀のようなものはあまり感じられなかった。父親に疎まれて育ったわりには性格もそんなに歪んでなくて良いんだけど、多少いじけて捻くれたところがあったほうが、女性読者としては母性本能をくすぐられるんじゃないかしら。弱い部分があったほうが、強さが引き立つというか。そういうところは、ジュリア・クインや、ロレイン・ヒースあたりのベテラン作家がやっぱり上手いと思うわ。あと、サブリナ・ジェフリーズのヒーローのヘタレ具合も結構好き。ジェナ・マクレガーは新人作家にしては頑張ったほうだと思うし、この前感想を書いたヴィヴィアン・ロレットよりは面白かったけど、ぜひ読みたいというほどではないので今後翻訳が出なくても別にいいかなという感じ。
ヒーローは“孤独な伯爵”とは言え、良い友人もいるし、ヒロインの家族とも懇意にしているから、そこまで孤独ではなかった。ヒロインは“純真な令嬢”というから、おとなしい女性かと思ったけど、かなり頑固で主張の強い人だったので、振り回されるヒーローが気の毒だったかも。子供の頃ひどい仕打ちを受けたのに、父親のことも結局許してあげて、このヒーローは本当に良い人だわ。良い人すぎて物足りないから、もっと意固地になってもいいんだよ~と思いながら読んでいた。ヒロインは親友がDV男と結婚して結局殺されてしまったことにひどく責任を感じていて、その男を成敗することを使命としているのだけど、DV問題を扱ったヒストリカルだったら、ちょっと前に読んだケリー・ボーエンの「忘れがたき記憶にとらわれて」のほうが面白かったな。あれはヒロイン本人が被害者で、やりかたが巧妙だった。この作品はDV男との決着のつけ方が荒業すぎてそれで良いのかと。
ヒストリカルは次々と新しい作家の作品が翻訳されているけど、面白い作家は少ないわね。凄い大型新人が出てこないものかしら。
- 作者: ジェナ・マクレガー,島原里香
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2018/06/08
- メディア: 文庫
The Bride Who Got Lucky: The Cavensham Heiresses (English Edition)
- 作者: Janna MacGregor
- 出版社/メーカー: St. Martin's Paperbacks
- 発売日: 2017/10/31
- メディア: Kindle版