シンデレラの赤い靴シリーズ3作目。考古学者の父親の仕事のため、異国で長く暮らしていたヒロイン。気の強いオールドミスのキャラクターにはあまり共感できないことが多いけど、このヒロインは多少風変わりでも、無駄に頑固だったりはしないので、それほどイラつくこともなかった。ヒーローはエジプト遺跡の研究者で、英国に持ち帰ったエジプトの遺物を熱心に解読している。研究ばかりで世捨て人のような生活をしているということだけど、そこまで変人でもないし見た目も麗しく、普通に尊大な公爵という感じで、原題にある野獣のイメージはなかった。ヒロインは、父親から死に際にエジプトの宝の地図を探すように言われたことから、それを持っていると思われるヒーローの元で学芸員として働くことに。
ヒーローもヒロインも、そこまでアクの強いキャラクターではないので、特別引っかかることもなく読みやすかった。そのぶん突出したところもなくてインパクトは弱めかも。それでも昔エジプトでヒーローの父が殺害された事件の真相や、ヒロインの地図探しのミステリーも織り込みながら、ロマンスも自然な感じでうまくまとめていて割と面白かった。この作者は、オリヴィア・ドレイクとして書く前に、バーバラ・ドーソン・スミス名義で80年代から執筆していたみたいなので、割とキャリアの長い作家さんだからか、ソツなく綺麗にまとめている印象で、よくわからない新人作家よりは安心して読めると思う。
このシリーズの1作目を以前読んだことがあるけど、今作のほうが謎解きが面白くて良かった。