ロマンス小説感想日記

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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

復讐の連鎖 マヤ・バンクス

 人気のロマサス、KGIシリーズ 9作目・・・のはずだけど、作者はサスペンスを書く気を無くしてしまったんだろうか?今作はどちらかというと、ヒロインよりもヒーローの心情が多く綴られていて、スーパーモデルに恋したセキュリティ会社のエージェントの物語に申し訳程度にサスペンスが入ってるという感じだった。

 モデルのヒロインの父親が元軍人で、昔任務で恐ろしい敵の恨みを買っていたため、娘を殺してやるという脅迫状が届き、KGIにボディーガードを依頼する。一応それっぽい設定だけど、その後、サスペンスらしき展開がほとんどない。仕事を引き受けたKGIが任務の前にミーティングを開くけれど、メンバーが赤ちゃんを連れてきてオムツ替えしながらブリーフィングしていて、KGIが家族経営のアットホームな会社で、みんな仲良し和気あいあいなのは良くわかったけど、こんな会社に仕事を頼みたくないと思うのは私だけだろうか・・。

 ヒロインがモデルの仕事でパリに撮影に行くので、KGIのチームもついてきて行動をともにするけれど、ヒロインは顔に大きな傷のあるヒーローを一目見てなぜか“ビビッときた”らしく、速攻アタック開始。滞在先のホテルでも、彼と同じ部屋がいいの♡と頼み込んで同室にしてもらい仲良くなろうとする。ヒーローも最初は、あんな美人が俺なんかを相手にするわけない・・・とウジウジ考えていたけれど、美人モデルに言い寄られて嬉しくないはずはなく、すっかり腑抜けになっている。絶世の美女でスタイル抜群、おまけに性格も良くて優しい彼女が愛してくれて超幸せな俺!のモノローグが延々と続き、メロメロヒーロー好きにはたまらない!のだと思う・・・たぶん。

 ヒロインが仕事関係のパーティーに出るので、ボディガードのみんなもタキシード買って一緒に行くわよ!と全員でショッピングに出かけたり、ほのぼのムードでストーリーは進んでいき、主役の2人はラブラブ状態。他のメンバーも、ヒーローが顧客とデキてしまったというのに咎めることもなく、恋人が出来て良かったな!と喜んでいて、大丈夫か、この会社。そんなこんなで9割ほど読み進んでやっとヒロイン達が乗った車が爆撃され、命からがら脱出。さあ、これからがヒーローの見せ場だと思いきや、そこで突然ハンコックという、ヒロインにとって家族同様の存在だという男性が登場し大活躍。速攻で脅迫者と思われる男を捜し出し、あっという間に始末してしまう。大勢いるKGIのチームができなかった仕事を一人でさっさとやってのけ、これじゃあKGIを雇った意味ないじゃん・・。そして、ヒーローが脅威は去ったと油断してヒロインから目を離した隙に、真犯人に彼女を誘拐されるという大失態をやらかし、さらに無能ぶりを露呈するという・・。このハンコックという男性は次作のヒーローらしいので、作者は期待を持たせるために彼を活躍させたんだと思うけど、主役でもないのに美味しいところを全部持っていくってどうよ。

 ヒロインにメロメロなヒーローは嫌いじゃないけど、このシリーズのヒーローは、(自分は1、2、7、9しか読んでないけど・・)内省的すぎる思考がちょっとまどろっこしいのよね。シリーズはこの先まだまだ続くらしいので、たまには「危険な世界に生きる俺に女は必要ないのさ!あばよ!」と去っていきヒロインを泣かせるようなハードボイルドなヒーローがいても良いんじゃないかしら。 

復讐の連鎖 (マグノリアロマンス)

復讐の連鎖 (マグノリアロマンス)

  • 作者: マヤ・バンクス,Maya Banks,市ノ瀬美麗
  • 出版社/メーカー: オークラ出版
  • 発売日: 2019/03/09
  • メディア: 文庫
When Day Breaks (KGI series Book 9) (English Edition)

When Day Breaks (KGI series Book 9) (English Edition)

  • 作者: Maya Banks
  • 出版社/メーカー: Berkley
  • 発売日: 2014/06/24
  • メディア: Kindle

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