ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

誘惑のトレモロ アイリス・ジョハンセン

 アイリス・ジョハンセンの初期作をもう1冊。こちらは1990年の作品。ウインド・ダンサーシリーズの直前に書かれたもので、この作品以降、長編にシフトしていったみたい。ミュージカル女優と作曲家のロマンスだから、「嵐の丘での誓い」と似たような話かと思っていたけど、デビュー作から進化して、色んな要素の詰め込まれた盛沢山なストーリーだった。以下ネタバレしていますのでご注意を。

 スイスでミュージカルに出演しているヒロインをスカウトしにアメリカからやって来たヒーローは、舞台で彼女を見た途端にその歌声の虜になり、何としても自分の作品に起用しようと決心する。さらに彼女の魅力に憑りつかれて自分のものにしたくなり関係を持ち掛ける。押しの強いヒーローが手八丁口八丁でヒロインを手に入れようとするのがなかなか刺激的。一旦関係を持ったら止まらずヒーローの滞在するホテルで逢引きを繰り返すふたり。女性向けのロマンス小説って、ラブシーンは読みやすいようにソフトな感じで上品に翻訳されていることが多い気がするけど、この訳者さんは元の英文に忠実に訳すタイプなのか、割と直接的な表現で書かれていて淫靡な感じがした。“根もとまで入ってる”とか、割とそのものズバリの表現で書いてあって、まあ原文どおりなんだろうけど身も蓋もない言い方だなと。ヒーローが命令的でSっぽいから雰囲気には合っていたし、変にぼかさずそのまま訳すのも潔くて良いと思うけどね。

 2人のめくるめく愛の世界(笑)は長くは続かず、ヒーローがアメリカに帰ることになり、家族の事情でスイスを離れられないヒロインは、捨てられて打ちひしがれる。悲しみに暮れるヒロインのメロドラマ風のロマンスかと思ったのも束の間、事情が変わってヒーローの作品に出演することになり、アメリカに渡ったヒロインが、何とサイコパスに殺されそうになるというまさかの展開(笑)で、予想の斜め上を行くストーリーに唖然とした。その事件にはヒーローの過去が関わっていて、ヒロインは彼の悲惨な状況を知り、何とかして救おうとする。辛い経験を経て強くなったのか、ヒーローに心を開いてもらおうと自分から誘惑するやけに積極的なヒロイン。裸エプロンには笑った。とにかく色々盛ってみましたという感じのストーリーで、粗削りだけど読者を楽しませようとする作者の心意気は伝わって来た。色んな意味で衝撃的な作品だったわ。これは珍しくシリーズものではない単独作だから読みやすいと思うので、未読の方は是非どうそ。

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