MIRA文庫っぽくない、一風変わったロマンス。この作家は初めて読んだけど、文章の表現力はかなりのもので、独特な雰囲気があって上手いと思う。高級文具店でラブレターの代筆屋をしているヒロインが、依頼人の男性と一緒に手紙の内容を検討しているうちに恋に落ちるという独創的な設定。こういう作品は好みが分かれそう。
この作品は、十代の頃の恋愛で傷ついて臆病になっているヒロインが過去を克服することが重要なテーマなので、作者はロマンスよりもヒロインの成長を書きたかったんだと思う。だからヒロインの一人称で書かれていて、ヒーローの存在感はやや薄め。ラブレターにエロティックな物語を書くことによって、封印していた官能性が解き放たれていき、過去を恥じて殻に閉じこもっていたヒロインが、本来の自分を取り戻していくというストーリー。エロティックなテーマだけど、いやらしい感じはあまりなく、アーティスティックに書くのがこの作者流なんだろう。所謂ロマンス小説より少し上を狙っているような感じ。
実際、ストーリー自体はたいしたことなく、雰囲気重視という気がするけど、ハマる人はハマるんじゃないかな。自分の好みとはちょっと違ったけど、それなりに上手い作家だということはわかった。この作者は二見文庫が3部作のロマサスも出してるから、今度そちらを読んでみようかな。
- 作者:M.J.ローズ
- 発売日: 2008/10/15
- メディア: 文庫