ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

唇にはレクイエムを シモーヌ・セントジェームズ

 幽霊が出てくるミステリーばかり書いている珍しい作家で、このデビュー作がRITA賞を受賞したらしい。1920年頃のイギリスの話で、その時代が舞台の小説をあまり読んだことがないから新鮮だった。

 ヒロインは、人材派遣会社から幽霊の本を書いている作家のアシスタントの仕事をもらい、若い女性の幽霊が出るという屋敷に調査に行くことに。その作家が若くてハンサムで感じの良い男性で、ヒロインも彼を素敵だと思っているようで、てっきりこの2人の間にロマンスが芽生えるものと思っていたら、そうではなくて後からやってきた作家の助手の男性がお相手だった。男性は2人とも戦争から帰還した兵士でトラウマがあり、助手の男性のほうは火傷のひどい痕があって体も心もボロボロで、そんな彼を癒してあげたいと思うヒロインの恋心が良かったけど、ロマンスの比重は少なめで残念だった。メインは幽霊退治で、ポルターガイスト現象に遭遇して恐怖に慄きながら、過去の事件の真相を探る。調査をするうちに幽霊になった若い女性の気の毒な境遇がわかってくる。幽霊ものが好きな人なら面白いと思うけど、自分の好みとはちょっと違ったかも。幽霊が出てくるけどホラーというほど怖くないし、ミステリーとしては割と先が読める。それでもRITA賞の新人賞を取ったのは、幽霊+ミステリー+ロマンス+1920年代という組み合わせが斬新で、あまりないストーリーだから独創性が評価されたのかな。 

 この作者はデビュー作から一貫して幽霊ものを書き続けているけど、新しい作品はアメリカが舞台になっていてかなり売れてるみたいだから、この変わり種のミステリーが意外と受けているのね。

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