ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

堅物侯爵の理想の花嫁 エラ・クイン

 軽く読める楽しいヒストリカル・ロマンスだった。侯爵のヒーローは父親を早くに亡くし、育ててくれた頭の固い伯父に時代遅れの考え方を植え付けられて、ひどく堅苦しい人間になってしまった。侯爵の義務を必要以上に重んじていて、結婚するなら相手は血筋の良い従順な女性だと決めていたけれど、進歩的な考え方で自己主張の強いお転婆なヒロインと出会って一目惚れしてしまう。

 ヒーローのモノローグにヒロインに夢中な気持ちが溢れ出ていて楽しい。動物や貧しい子供を救って回る彼女に振り回されているのが笑える。ただ、考え方の古い伯父に教育されていたとは言え、ヒーローがいい大人のくせに全然世の中のことがわかっていないというのは何だかなあ。頭が固いのはいいけど無知なのはいただけない。まあ、ヒロインの影響で庶民の窮状に目を向けるようになって成長したのは良かった。

 前作のカップルとその兄弟姉妹がわんさか出てきて賑やかだけど、キャラクターが多いわりにはそれほど混乱することなく読めた。ストーリーは、女性や子供を売り飛ばす悪人をやっつける捕り物劇があったと思えば、ヒロインを結婚させまいとする悪巧みが企てられたり、やたらと盛り沢山だった。深刻な事件もさらっと書いてあるのであまり重くはない。次々と色んなトラブルが起きるけど、ヒロインはそこまで危機的な状況にはならないし、葛藤はあるけどヒーローのヒロインへの気持ちはあまり揺るがないので安心して読める。深く心を揺さぶるようなロマンスではないけど、軽く楽しむにはちょうど良い作品だと思う。

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