ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ A・J・フィン

 ガール・オン・ザ・トレインと似た設定の、"信頼できない語り手"のミステリー。このヒロインはアル中なだけでなく、酷い精神疾患向精神薬をたんまり飲んでいて、広場恐怖症のため家から一歩も出られず引き籠っているというかなりすごい状態。あとがきによれば、作者もうつ病広場恐怖症を患っていたことがあるらしく、ヒロインの精神状態の描写がすごくリアルだった。男性の作家だけど、わざと中性的なペンネームにしたそうで、男くさいミステリーではなく、女性が書いたと言われても違和感のない内容だと思う。

 序盤は精神科医なのに精神を病んでしまった引き籠りヒロインの日常が描写されている。ネット上の広場恐怖症の人たちのコミュニティで他の人に助言を与えていて、医者の誓いを忘れず少しでも人助けをしようとしているのは立派だと思った。なかなか事件が起きないので少しじれったかったけど、事件後の展開はとても面白かった。家から出られずカメラ片手に窓から近所の家を覗き見するのが趣味になってしまったかなり病んでるヒロインが、偶然、向かいの家で女性が殺されるのを目撃するけれど、警察に言っても信じてもらえない。だんだん追い詰められていき、狂気と正気の間をさまよっているような彼女の精神状態にハラハラさせられる。ヒロインが昔のモノクロ映画のファンで、色んな映画のタイトルや俳優の名前が出てくるので、古い映画が好きな人ならさらに楽しめると思う。自分はそういうのにはあまり詳しくないけど、密室サスペンスの映画みたいな雰囲気をうまく出していたと思う。

 ヒロインが広場恐怖症になったのは非常に恐ろしい目に遭ったからで、そのあまりにも悲惨な状況には同情を禁じ得ない。彼女の罪悪感や後悔、様々な感情が繊細に描かれていて、精神を病んでボロボロになってしまうほどの深い悲しみには胸を打たれた。

 全体的にはそこまですごいトリックのミステリーではないけれど、ヒロインの恐怖が真に迫っていてサイコ・スリラーとしてはなかなかの出来だと思う。奇異な事件で真犯人には驚かされた。ラストに彼女が事件を乗り越えて少し前向きになれたのが良かったと思う。サスペンスとして面白い上に、一人の女性に起きた人生の悲劇に心を動かされるストーリーで、ベストセラーになって映画化されただけのことはあると思う。

以下ネタバレ

 

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 読み始めて割とすぐ、これはきっと映画のシックス・センスの逆バージョンみたいな感じで、本当は夫と娘はもう死んでるんじゃないかとピンときたので、それがわかった際も驚きはなかったけれど、そのことを警察に指摘されてヒロインがひどく動揺した時には読んでいて辛かった。彼女は2人が生きていると本気で信じていたわけじゃないけれど、妄想の中で2人と話をすることで心がなぐさめられていたというのが泣ける。もし自分がこんな風に夫と娘を失くしたら、やっぱり正気じゃいられないだろうなと思うと切なかった。

 

 文庫化されましたウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 上 (ハヤカワ文庫 NV フ 40-1) ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 下 (ハヤカワ文庫 NV フ 40-2)

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