ロマンス小説感想日記

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海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

道化の館 タナ・フレンチ

 少し前にこの作者の「悪意の森」の記事を書いた時には、こんな10年以上前のミステリーの感想を読みたい人はあまりいないだろうと思っていた。それなのにこのタイトルをgoogleで検索して記事に辿り着く人が意外とたくさんいるので不思議に思って調べてみると、割と最近ドラマ化されていたことがわかって納得。やはり映像化されると注目度が違うわね。そういえば「ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ」の記事もNetflixで映画の配信が始まった直後に異様にたくさんアクセスがあって驚いたっけ。急にページ閲覧数が跳ね上がったから、何か変なこと書いたっけ??と慌ててしまった。世の中の関心は、映画やドラマ >> 小説 なのね。タナ・フレンチは作風が独特なので小説の雰囲気をそのまま映像化するのは難しいんじゃないかと思う。謎解きよりも登場人物の濃すぎる心理描写が面白い作品なのに、ドラマにしたら普通の刑事ものになっちゃいそうな気がするな・・。

 ドラマの話はさておき、本作はDublin Murder Squadの2作目。ミステリーのシリーズもので毎回主人公が変わるのって珍しいわね。「悪意の森」の主人公のロブは、ヘタレだけど憎めなくて結構好きだったのに「道化の館」には残念ながら出ていなくて、代わりに彼の相棒だったキャシーが主人公に。彼女は前作では切れ者だったけど、今作は潜入捜査でだいぶメンタルをやられている。このシリーズは主役になるとみんな病んじゃうのか・・。タナ・フレンチを読むのも2作目で、独特のまわりくどい文章もあまり気にならなくなってきた。なかなか本題に入らずにじらされているような気がする作風も、これはこれでありかなと。

 ストーリーはというと、どういうわけか主人公のキャシーが昔、潜入捜査をしていた時にでっちあげた身元を騙る女性が刺殺され、殺人現場に行ってみると何と見た目もそっくり。それで上司の思い付きで、女性は病院で命をとりとめたということにして、キャシーが彼女に化けて犯人を捜すことに。その女性は大学院生で、4人の学生とハウスシェアして大きな古い屋敷に住んでいた。その4人のうちの誰かが犯人という可能性もあり非常に危険なのに、殺された女性のふりをして屋敷で彼らと一緒に暮らすキャシー。役になりきってどんどんのめり込んでいく彼女が危なっかしくてハラハラさせられた。(他人の空似なのに、一緒に住んでるハウスメイトたちにも気づかれないほどそっくりなんてあり得ないと思うけど、それが前提のストーリーなのでそこはツッコまないでおこう。)潜入捜査で張り詰めた精神状態のキャシーの不安定さがすごくリアルに描かれていて流石。ストーリーも独創的で、古い屋敷がたくさんあるアイルランドならではのミステリーだと思う。犯人捜しも興味深いけど、一緒に住む学生たちの強い絆とか、ちょっと歪んだ友情とか、登場人物たちの心理を抉り出すようなストーリーが秀逸で、やるせない結末も心に響くものがある。タナ・フレンチは最初はちょっととっつきにくいけど、読んでいるうちにハマる作家だと思うわ。

  (追記)  

結末を知りたい人向けのネタばれ レクシーを刺したのはジャスティンだけど殺すつもりはなく事故だった。レクシーは刺されてすぐに死んだわけではなく、すぐに手当をすれば助かったかもしれないのに、ダニエルはレクシーに死んでもらいたかったので、ジャスティンが彼女を助けようとするといけないので、「彼女は死んだ」と言って帰らせ、彼女が死ぬまで放っておいた。というのが真相だと思う。

 

 

 

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AXNミステリーでは「ダブリン 悪意の森」のタイトルで放映中

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