Channel Fleet 3部作の2作目。ヒロインのローラは未亡人。父親に無理やり高齢の準男爵に嫁がされ夫から酷い仕打ちを受けていたにもかかわらず、結婚後1年ほどで脳卒中で寝たきりになった夫を、亡くなるまでの2年間献身的に介護していた。
ローラは、海軍の艦長と結婚している異母妹(「灰かぶりの令嬢」のエレノア)に会いに行き、海軍の外科医であるフィレモンと出会う。ひどい怪我を負った負傷兵が大量に運び込まれてくる海軍病院の惨状を見て病院で働く決心をし、フィレモンの助手として働くうちに、仕事熱心で有能な外科医の彼に恋をする。
戦争中の海軍病院の悲惨な状況が描かれていて、ロマンス小説らしからぬ重い内容だけど、だからこそ心に響くものがあると思う。実直で勤勉なヒーローは誠実そのもので、とても素敵だったし、薄幸な境遇のヒロインが意外にも芯の強いところを見せるのも良かった。当時の医療事情も興味深く、ライトがないから昼間に外で太陽の光を利用して手術をしていたと知って驚いたし、負傷兵が血まみれの状態でやってくる凄惨な状況をリアルに描写していて戦争の過酷さが伝わってきた。そういう時代背景をきちんと書いているからこそストーリーに説得力があり、感動的なロマンスになるんだと思う。