ドッペルゲンガー現象(?)がテーマのSFサスペンスで、恐らくガチのSFファンからすると色々突っ込みどころがあるんだろうけど、シュレディンガーの猫の説明とかもわかりやすかったし、文系頭の自分でも楽しく読めて面白かった。最近はマーベル映画でもマルチバースがテーマになっているし、こういうのが流行り?
主人公のジェイソンは大学教授で、若い頃は物理学者として将来を期待されていたけれど、結婚して家庭を持つことを選び、研究の道は諦めて二流大学で教えている。愛する妻と息子と共に幸せに暮らしているので後悔はしていないけれど、昔別の道を選んでいたらと考えることはある。ところがある日、何者かに拉致され薬を注射されて気を失い、目が覚めるとそこでは自分は結婚しておらず、画期的な装置を発明して物理学者として成功を収めている世界だった・・・というストーリー。
過去の決断の積み重ねで今の自分があり、間違った決断をすることもあるけれど、それも人生の一部だというのはなかなか深い。ジェイソンは自分の世界に戻ろうと奮闘するけれど、それは偏に愛する妻に会いたいからで、ある意味これは壮大なラブストーリーだと思う。終盤の展開がやや不可解だったけど、最後まで予断を許さないストーリーで面白かった。この作者は脚本家でもあり、全体的に短い簡潔なセンテンスで書かれていて、文体が脚本っぽいので原書はそのことが批判されているけど、翻訳ではあまり気にならず読みやすかった。
あとがきによれば映画化決定とのことだけど、調べてみたら映画ではなくドラマシリーズに変更になったようで、現時点の情報では2023年にAppleTV+で配信予定らしい。(早川が出す小説ってAppleTV+のドラマ化率が高いような。)ちなみにジェイソン役はジョエル・エドガートンという俳優さんで、妻のダニエラ役がジェニファー・コネリー。
(追記)
ドラマは apple tv+ で2024年5月配信 ダーク・マター - Apple TV (日本)
映像化に向いている内容だと思うので期待大。