Westcottシリーズ2作目。前作ヒロインのアナに振られてしまった画家で美術教師のジョエルがヒーローに。ヒロインは父親が重婚していたことが発覚し、伯爵令嬢から私生児に落ちぶれてしまったカミール。以下、多少のネタバレあり。
カミールは最初のうちはツンケンしていて感じが悪く、あまり印象が良くなかったけれど、それは幼い頃から完璧な貴婦人を目指して自分の感情を押し殺していたためで、刺々しい態度の裏に傷つきやすい心が隠れていたことがわかって、すっかり彼女に同情してしまった。ジョエルも当初は彼女のことをアマゾネスや鬼軍曹のように思っていたけれど、彼女の心の奥を知るにつれて惹かれるようになっていく。
ジョエルはアナに失恋して傷心を抱えている(まあ立ち直ってそれほど落ち込んではいないけど)のに加え、自分の出生にまつわる秘密を突然知らされ葛藤している、悩めるヒーローという感じのキャラクター。ちょっと弱気なところがあり、ヒロインに慰めてもらっていたり、彼女にプロポーズする時も悩んでなかなか言い出せなかったりするけど、そんなヘタレなところが可愛くて私は結構好きだな。
毅然としたヒロインがヒーローの男っぽさにドギマギしたりするのが楽しかった。お似合いの二人で、ロマンスも説得力があり良かったけど、結局二人ともそこそこお金持ちになって安泰な生活を手に入れるのよねえ。ヒストリカル・ロマンスもたまには「貧乏だけど幸せに暮らしましたとさ・・」という結末でもいいと思うけどね。
このシリーズの1~2作目の流れは、ジュリア・ジャスティスの「意外な求婚者」と「ふさわしき妻は」を髣髴とさせるところがあると思う。どちらも優しい女性に恋していた男性が振られて勝気な女性と結婚するパターンでなかなか面白い。ハーレクイン・ヒストリカルは最近は全然読んでないけど、昔いくつか(デボラ・シモンズ、エリザベス・ロールズ、二コラ・コーニック、ゲイル・ウィルソン等)読んだ中では、私はジュリア・ジャスティスが一番好きだったな。