ベストセラーになっただけあって文句なしに面白い小説だった。私はSFよりもミステリー派で科学の知識もお粗末だけど、問題なく読めて楽しかった。上下巻でかなりの頁数にもかかわらず、ユーモラスな作風で読みやすく長さも全く気にならなかった。
主人公のライランド・グレースは優秀な科学者だけど、とんでもない論文を発表して叩かれ、今は研究の世界から離れて教師になり中学校で理科を教えている。子供好きな良い人で、ちょっとヘタレで男なのによく泣くところも人間味があって、誰もが応援せずにいられない愛すべきキャラクターだと思う。謎の物質によって太陽の輝度が減少し、このままだと地球が氷河期に入り人類が滅亡してしまうという恐ろしい事態になり、世界の国々が協力して調査のために科学者を宇宙に派遣するプロジェクトが立ち上げられる。そこでグレースの書いた論文が注目され、彼も参加することに。宇宙で調査に奮闘するグレースたちの様子と、宇宙船を打ち上げるまでの地球でのあれこれが並行して描かれていて、どちらもハプニングに次ぐハプニングで退屈する暇がない。グレースが素直で喜怒哀楽のわかりやすいキャラクターなので、読んでいると彼の感情が伝わってきて一緒にハラハラドキドキを体験しているようでとても楽しかった。
宇宙に行ったグレースは仲間と協力して地球を救うために調査をするのだけど、この２人の友情が泣けるのよ。ネタバレになるので詳しくは書かないけど、仲間のエンジニアも良い奴でねぇ。次から次へと難題にぶつかって、２人が抜群のチームワークで対処するのが素晴らしい。漫才みたいな２人のやりとりが面白くて何度も笑わせられたし、命懸けでお互いを守ろうとする姿には感動した。最後のほうで驚愕の真実が明らかになって唖然としたし、意外な結末も良かった。これは読まなきゃ損な傑作だわ。笑えて泣けて最高に面白い。ＳＦが苦手な人にもおすすめ。
