これは以前、同系統のYA小説「デリリウム17」の記事にちょこっと感想を書いていたけど、最近Netflixが映画化したようなので新しく記事にすることに。配信日は未定だけど撮影は終了しているみたいなのでそのうち見られるんじゃないかな。
ヤングアダルト向けのディストピアものは、似たような話が多くてあまり変わり映えしない印象だけど、私が何作か読んだ中ではこの「アグリーズ」が一番面白かったのよね。設定がユニークでインパクトがある。16歳になるとみんな整形手術を受けて美男美女ばかりになるという世界の話で、実は政府の策略で顔だけじゃなく脳もいじられてて、手術後はみんな脳天気なパリピ(!?)にされてしまうという恐ろしい陰謀に主人公のタリーと仲間たちが立ち向かうというストーリー。顔の美しさに関する考察がなかなか興味深く、ルッキズムが問題視されている昨今、色々考えさせられる内容だと思う。女性の作家が多いジャンルだけど、男性作家が書いているにしては、15歳の女の子の気持ちが繊細に描かれていて上手いと思った。
スコット・ウェスターフェルドは他にもスチームパンクのリヴァイアサン シリーズや、アーバンファンタジーのミッドナイターズ シリーズも翻訳されていて、かなり人気のあるYA作家らしい。翻訳は出ていないけどヴァンパイアものも書いている。ディストピア系は、スーザン・コリンズの「ハンガー・ゲーム」が大ヒットした後に似たようなのを書く作家が続々出てきたけど、この作者は「ハンガー~」より前にこれを書いていて、流行に乗っかったわけではなく、むしろブームの先駆け的な作家だと思う。
この作品、日本で刊行された当時はそんなに売れなかったみたいだけど(出版社のキャッチコピーも悪かったと思うわ。アメリカで話題の"ビューティー・ノベル"って、そういう話じゃないから・・。)Netflixで配信が始まったら注目されるようになって、続編が翻訳されたりしないかしら。主人公が手術を受けて可愛くなる2作目がちょっと気になる。(翻訳は2冊出ているけど、原書の1作目を分冊しただけなので、2作目は翻訳されていない。)まあこれを出版していたヴィレッジブックスは既に廃業しているけど・・。
↓原書は4部作