最近のサンドラ作品は、お得意のどんでん返しがやや精彩を欠いているような気がしていたけど、これは凄い。終盤の展開は全く予想外でかなり驚かされた。父の失踪の謎を解明するため故郷に帰ってきたヒロインと、彼女を危険から守ろうとする謎めいたヒーローのロマンスが素敵で、ストーリーも意外性があり良かった。以下若干のネタバレあり。
とても良く出来たミステリーだけど、ヒロインの父親が失踪する原因となった昔の強盗事件が思っていたのと違い、周到に考えられた計画というわけではなく寄せ集めのメンバーによるいきあたりばったりの犯行だったので、事件自体にはそこまで興味をそそられなかった。首謀者はどうしようもなく嫌な奴で陰湿さはかなりのものだけど、狡猾さはあまり感じられず力業で脅しつけて人を従わせている感じで、もう少しカリスマ性のある悪役だったらクライム・サスペンスとしての面白味が増したんじゃないかな。
強盗に加担したヒーローというのはかなり際どい設定だと思うけど、犯行は17歳の未成年の時で、脅されて無理やり仲間に加わって、そのことをずっと悔やんでいるとか、ロマサスのヒーローを完全な悪人にするわけにはいかないからグレーゾーンにぎりぎり留まるように色々と考えたんだろうね。その結果、バッドガイの雰囲気を漂わせながらも真摯さが感じられる魅力的なキャラクターになっていると思う。
行動力のある美人のヒロインと危険な雰囲気のヒーローが出会った時から惹かれあうロマンスはこの作者の定番という感じで良かったけど、ヒロインが流産したばかりという設定は微妙だったな。意外性を狙ったんだろうけどミステリーの本筋には関係ないし蛇足だと思う。ヒーローが隠し事をしていてヒロインが彼に疑念を持っているにもかかわらず、意外と簡単にくっついたような印象だけど、やたらと葛藤してばかりなのもまどろっこしいのでロマサスではこういうスピード感のあるロマンスも良いと思う。
サンドラ作品の中では大傑作というわけではないけど、美男美女のカップルの熱いロマンスが素敵だったし、ミステリーもよく練られていて、ファンなら読んで損はないと思う。