J・カッツェンバックは80年代から活躍しているそこそこ有名な作家で、ショーン・コネリーやブルース・ウィリス主演で映画化されたタイトルもあり人気があったらしい。これは2003年刊行の古い作品。主人公は奥さんを癌で亡くした男やもめの精神科医で、53歳の誕生日に謎の人物から脅迫状が届く。必死で脅迫者の正体を探ろうとするけれど、何故か次々とトラブルに見舞われ恐ろしい事態になっていくというサイコ・サスペンス。
つまらないわけではないけどあと一歩という感じ。面白くなりそうな要素はたくさんあるのにいまひとつ盛り上がりに欠ける。この設定ならもっと読者をあっと言わせるような展開に出来たはずなのに惜しい。窮地に陥った主人公が一体どうなってしまうのか、先の読めないストーリーで悪くはないんだけど、精神科医という職業柄かセリフがやけに回りくどいし、悪人ではないけど善人というわけでもないよくわからないキャラクターであまり好きになれず、感情移入できなくて割と淡々と読んでいた。もっと人生を奪われた悲哀みたいなものが感じられたら良かったんだけど・・。犯人に追われる側だった主人公が、後半は追い詰める側に転じ、普通のオジサンがムキムキの銃の達人になって復讐するというのはとてもワクワクする展開なので、主人公に共感できれば楽しめるんじゃないかな。自分の好みとは違ったけど、気に入る人もいると思う。