この作家は以前「ボックス21」(→感想) を読んで、ストーリーは良く出来ていて面白かったけど、主人公のグレーンス警部が陰気で偏屈なオジサンであまり好きになれないキャラクターだったのと、全く救いのない結末が不条理すぎて気に食わなかったのとで、それ以来読んでいなかったのよね。
でも先日、主役のジョエル・キナマンが好きで見た映画の"THE INFORMER"(←この作者の「三秒間の死角」が原作で、情報屋のピートが主人公だけどグレーンス警部も脇役で出ている。)が凄く面白かったので、また興味が湧いてきた。映画はハリウッド版だから舞台がスウェーデンではなくアメリカになっていて、グレーンスがNY市警の黒人の警部だったり、原作の内容をかなり改変しているのが察せられたけど、それでも十分面白かったので、小説も読んでみるかなと。
「三時間の導線」はピート&グレーンスのダブル主役シリーズ3作目。期待に違わずとても面白くて「ボックス21」よりずっと気に入った。グレーンス警部もピートの家族を気にかけていたり、以前の印象より良い人になっていて好感が持てたし、命懸けで潜入捜査に飛び込んでいくピートがとにかく凄い。バレたら即殺される危険な任務で、読んでいてハラハラドキドキが止まらなかった。アフリカ難民の密航を請け負っている非合法の業者の実態を探るため、ピートが現地アフリカで、グレーンスがスウェーデンで、それぞれ捜査を進め犯人を追い詰めていくストーリーで、2人のコラボレーションが絶妙だった。スウェーデンにいるピートの家族にも危険が及んだり、最後まで気の抜けない展開でとても面白かった。
前に読んだ「ボックス21」と文章の雰囲気が違うように感じたけど、この作品はこれまでと翻訳者が変わっているから英語版の重訳かな。以前は文章がもう少し硬い感じだったのが軽めになっているような気がするけど、これはこれで読みやすくて良かった。潜入捜査官のピートがすっかり気に入ってしまったので、これはシリーズ全部読むべきか?!
↑映画もおすすめ。脇役もクライヴ・オーウェンやゴーン・ガールの女優が出ていて意外と豪華キャスト。