グレーンス警部シリーズ3作目。「ボックス21」に続き、こちらも北欧の動画配信サービスViaplayでドラマ化されて、日本ではwowowが4月に放映予定とのこと。「CELL 8 ~ある脱獄囚の真実~」| WOWOW ドラマのあらすじを見たら、原作の内容をかなり変えているみたいで、女性刑事マリアナの恋人が脱獄した死刑囚だったということになっている。小説では脱獄犯のジョンは妻子持ちで刑事と恋仲になったりはしない。案外ドラマ版の設定のほうが面白いかも。
死刑制度について色々考えさせられる内容で、作者が元ジャーナリストだけのことはある。真犯人がまさかの人物で、事件の真相には驚愕させられたし、ミステリーとしても良く出来ていて面白かったけど、またもや結末がやりきれない・・。この読者を落ち込ませる鬱エンディングは好みが分かれると思うけど、読んで損はない力作だった。スウェーデンはずっと昔に死刑を廃止してたのね。犯罪者の引き渡しに関して、死刑に処される可能性がある場合はEU諸国は引き渡しに応じないというのは初めて知ったわ。スウェーデン政府が、アメリカからの圧力と世論の反発の間で苦慮して狭量な対応をするところはやけにリアリティがあった。
奥さんのことで落ち込んでいるグレーンス警部を元気づけるために、マリアナがダンスに誘ったり、警部の好きな歌手のディナーショーを見に行ったりするエピソードはほのぼのムードで悪くはないけど、読んでいて別に無くてもいいかなと思ったので、ドラマ版で脱獄犯がマリアナの恋人という設定に変えたのは正解だと思う。そっちのほうが緊張感のある展開になりそう。
以下は小説の結末を知りたい人のためのネタバレ。ドラマを見た人が原作小説の内容を知りたくて、検索してこのブログに辿り着くというパターンが多いので。
ネタバレ
刑務所の看守長エリックセンは実は死刑反対論者で、少女を殺害してジョンに罪を着せたのも彼だった。冤罪で死刑が執行された後に真犯人は自分だと名乗り出れば大問題となり死刑制度が崩壊するだろうと目論んでのことだった。しかし刑務所でジョンと接するうちに彼を息子のように思うようになり死なせるのが気の毒になって、刑務所の医師も巻き込んで計画を練り脱獄させた。ところがジョンがスウェーデンで暴行罪で逮捕されたことで身元が割れ、アメリカに引き渡されて結局死刑になってしまったので、最初の目論見どおり、自分が真犯人だと名乗り出た後に自殺する。その際、殺害された少女の父親フィニガンが死刑推進論者で気に食わないので、罪を着せるため彼の銃を盗んで自分を撃ち他殺に見せかける。そしてフィニガンが冤罪で死刑囚として服役するところで終わっている。