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私の唇は嘘をつく ジュリー・クラーク

私の唇は嘘をつく (二見文庫 ク 12-2)

私の唇は嘘をつく (二見文庫 ク 12-2)

  • ジュリー・クラーク
  • 二見書房
The Lies I Tell: A Novel (English Edition)

The Lies I Tell: A Novel

  • Clark, Julie
  • Sourcebooks Landmark

 

 前作「プエルトリコ行き477便」のほうが良かったけど、これも面白かった。女詐欺師のメグと、彼女の正体を暴くために調査を続けている女性ジャーナリストのキャットの物語。以下、多少のネタバレあり。

 メグは詐欺師とは言え、女性を食い物にするゲス男だけをターゲットにして弱者のために行動しているところは称賛に値するし、極貧生活から這い上がった逞しさは立派だと思う。最初に彼女の標的となった中年教師は女子生徒に手を出している最低男で、破滅させられていい気味だと思ったし、相手を信頼させ油断させるメグの手口が巧妙で興味深かった。女性読者ならきっと彼女に肩入れしたくなると思う。ただ、詐欺の腕前があまりにも鮮やかすぎて、そこまで窮地に陥ることもなくハラハラするような場面があまりなかったのが少し残念だったかな。いつも冷静沈着で、詐欺師としての自分の生き方を受け入れているような達観したキャラクターだった。サスペンスを盛り上げるためにはメグを謎めいたキャラクターにしておく必要があるから、感情表現を抑えめにしたんだろうけど、もう少し苦悩や葛藤を露わにしても良かったんじゃないかとは思う。

 それに対してキャットは、昔恐ろしい目に遭ったことは確かにとても気の毒だけど、メグを恨むのは筋違いで復讐すべき相手はネイトだろうと思いながら読んでいたので、そこまで共感できなかったかなぁ。愛し合っているとは思えないギャンブル依存症のボーイフレンドと付き合い続けているのも解せなくて、さっさと別れればいいのに・・とヤキモキさせられた。キャットのほうが成長の余地があるキャラクターで、実際、メグと関わったことで最終的に心境が変化したのは良かったと思う。(でも訳者さんのあとがきには、キャットは感情移入しやすいキャラクターで、メグは詐欺師だから諸手を挙げて応援できないところがあるが・・・みたいに書かれていたのよね。その逆だと思った私は少数派なのかしら。)

 2人の女性の複雑な関係性が上手く書かれていて、引き込まれるストーリーだった。キャラクターもよく練られていて、犯罪者でありながらも一本筋が通っていて応援したくなるような絶妙な人物造形が流石。前作が気に入った人なら、これも読んで損はないと思う。

 

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