ホフマン&グレーンス2作目。これも良かったけど、3~4作目のほうが短くまとまっていてスピード感がアップしていると思う。本作は主人公のピートがアメリカのDEAのためにコロンビアの麻薬組織に潜入する話で、アメリカの下院議長がゲリラに拉致されたり、かなり壮大なサスペンス。いくらDEAの長官がスウェーデンの警視正と個人的な知り合いだからと言って、DEAがコロンビアでの潜入捜査にスウェーデン人を使うとは思えないけど、またもや政府に裏切られ殺されそうになったピートが、生き延びるために凄い計画を実行するのが驚異的で、多少無理のある設定でもグイグイ読ませる勢いがあった。グレーンス警部はピートのためにあちこち行ったり来たりして、今回はお使い役という感じだったな。
ゲリラに拉致されたアメリカの議員は、娘が過剰摂取で亡くなったことで麻薬組織の撲滅に尽力していて偉いとは思うけど、護衛が止めるのも聞かずにコロンビアの危険地帯に乗り込んで行き、部下を殺され自分は拉致されるなんて、はた迷惑にもほどがある。そのせいでアメリカ政府がゲリラのメンバーの抹殺指令を出して、そこに潜入中のピートは窮地に立たされるけど、一人で政府と渡り合い、交渉し、裏切られた場合の逃げ道まで用意するという周到さは流石で、しかも家族を守りながらそれをやってのけるんだから素晴らしい。アメリカ政府の上層部の理不尽な対応がいかにもという感じで腹立たしいけど、ピートがあと一歩で殺されそうになりながらも、危機一髪で反撃するのにハラハラさせられ面白かった。フィクションだけど、コロンビアの恐ろしい実態はリアリティがあって考えさせられるものがあり、作家が実際に現地へ行ってリサーチしただけのことはあると思った。