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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

夜を生き延びろ ライリー・セイガー

Survive the Night: TikTok made me buy it! A twisty, spine-chilling thriller from the international bestseller (English Edition)

Survive the Night

  • Sager, Riley
  • Hodder & Stoughton

 

 前作と違って、本作の主人公は"信頼できない語り手"で、時々幻覚を見てしまう、ちょっと精神を病んだ女子大生。親友だったルームメイトが殺害される事件が起き、彼女を助けられなかった罪悪感に苛まれて大学を去る決心をし、実家に帰るのに相乗りさせてくれる人を大学の掲示板で募集したところ、首尾よく同じ方面に行く男性が見つかり、翌日の夜、早速出発することに。ところが車中、話をしているうちに、彼が親友を殺した犯人ではないかと疑うようになり・・というストーリー。

 ヒロインが自分から危険に突っ込んでいくような行動ばかりしていて、ややご都合主義なところはあったけど、疾走感のあるストーリーに引き込まれて一気読みだった。無防備すぎるヒロインにヒヤヒヤさせられ、先の読めないストーリーにどんどんページをめくってしまった。パラノイア気味のヒロインの思考がリアルで恐怖が伝わってきたし、彼女が精神的に追い詰められていくにつれ幻覚を見るようになり、混乱に陥っていくのにハラハラさせられた。ストーリーの粗さを勢いでねじ伏せているようなところはあり、多少ツッコミどころはあるけれど、私は好きだな。この作家は話の盛り上げ方が上手いと思う。以前読んだテイラー・アダムスの「パーキングエリア」は似た系統の話だけどつまらなかった。本作のほうがずっと面白かった。

 前作「すべてのドアを鎖せ」(→感想) が良かったので新作を楽しみにしていたけど、"Survive the Night”はこの作家の作品の中では評価低めなので、翻訳を出すなら高評価の"Home Before Dark"にしてくれたら良かったのにと思っていたのよね。でも読んでみたら、これも十分面白かった。未訳の作品がまだたくさんあるから翻訳してほしいわ。ピーター・スワンソンやアリス・フィーニーが好きな人におすすめだと思う。

 この作家もペンネームが色々あって、最初は本名のTodd Ritter名義でミステリーを4作、次にAlan Finn名義でヒストリカル・フィクションを1作出したものの、鳴かず飛ばずで、出版社は既刊が売れていない作家をあまり出したがらないため、新たにライリー・セイガーというペンネームで作風を変えて新作を出したらベストセラーになったという。昔のペンネームで出した作品は黒歴史になっているようで、Riley Sagerのウェブサイトには一切載ってないのよ。過去の作品はなかったことにして、新しい名前で新人作家のように売り出すなんて、アメリカの出版社ってえげつないわね。

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