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盗作小説 ジーン・ハンフ・コレリッツ

The Plot: A Novel (English Edition)

The Plot: A Novel

  • Korelitz, Jean Hanff
  • Celadon Books

 

 これの原書は2021年のミステリーの話題作で、各所の年間Best Booksみたいな企画で入選していた ( NY TimesのThe Best Thrillers of 2021にも入っていた。) ので、期待して読んでみた。

 確かに独創的なミステリーで、よくこんな話を考えたなと思った。主人公のジェイクは作家で、かつてデビュー作がそこそこ話題になり、2作目もかろうじて出版されたけれど、その後は原稿を持ち込んでもことごとく出版を断られるようになり、今は仕方なく、短期間で修士号が取れるという胡散臭い大学の作家養成講座の講師をしている。このジェイクのひねくれ具合が最高で、売れない作家の自分を皮肉る自虐ネタが笑えたし、才能のかけらもない受講生たちを嘲笑するモノローグが面白かった。ものすごく屈折したキャラクターなんだけど憎めないところがあり、過去の栄光にすがる落ちぶれた作家の惨めな姿に同情してしまった。

 ある時ジェイクは、講座の受講生のエヴァンから、これから書くつもりだという小説のプロットを聞いて衝撃を受ける。それは誰も考えつかないような、ベストセラー間違いなしの凄いプロットだった。しかし何年かたってもエヴァンの小説が出版される気配はなく、不思議に思ったジェイクが調べてみると、何と彼は亡くなっていた。あの素晴らしいプロットを埋もれさせておくわけにはいかないと、エヴァンのプロットを借用してジェイクが小説を書き上げると、またたく間にベストセラーになり、一躍人気作家に返り咲いたけれど、「お前は盗人だ」というメールが届き・・というストーリー。

 画期的なミステリーではあるけれど、展開はゆっくりで説明的な描写が多く、ページターナーとは言い難いかな。ジェイクが脅迫者の正体をつき止めようとするエピソードが大部分を占めていて、地味に調査して少しずつ謎が明らかになっていくという感じなので、危険が迫ってハラハラドキドキということはあまりなく、やや盛り上がりに欠けるかも。それでも途中にジェイクの書いた小説の抜粋が差し挟まれているのがアクセントになって単調になるのは免れていると思う。最後のどんでん返しは凄い!これで作品の評価が上がった。この結末には一読の価値があると思う。とんでもないイヤミスだけど面白かった。

 一応これもドラマ化する話があるらしい。Onyx Orders ‘The Plot’ Limited Series Starring Mahershala Ali  – Deadline  ちなみにこの作家の "You Should Have Known" (未訳) を以前HBOが "The Undoing" のタイトルでドラマ化していて、日本では「フレイザー家の秘密」というタイトルで配信中。

You Should Have Known: coming soon as The Undoing on HBO and Sky Atlantic (English Edition) https://m.media-amazon.com/images/I/91zw7f1LujL._AC_UL600_FMwebp_QL65_.jpg

 

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