ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

過去からの殺意 ヴァル・マクダーミド

過去からの殺意 (集英社文庫)

過去からの殺意 (集英社文庫)

The Distant Echo (Detective Karen Pirie)

The Distant Echo (Detective Karen Pirie)

  • McDermid, Val
  • HarperCollins Publishers Ltd

 

 V・マクダーミドは、多くの作品がドラマ化されているスコットランドの人気作家で、このカレン・ピリー シリーズは、昨年ドラマ化されて日本でも今年春に放映されたばかり。→刑事カレン・ピリー 再捜査ファイル|AXNミステリー  ヴァルという名前から男性だと思っていたけど女性の作家で、登場人物の心理が繊細に描かれていて良かった。(昔はミステリーのジャンルは男性作家が優位だったから、わざと男性っぽいペンネームにしたのかもね。)

 昔の事件の再捜査もので、独特なストーリーがとても面白かった。1978年に若い女性がレイプされて殺害される事件が起き、その際に、血を流して瀕死の状態の被害者を4人の大学生のグループが見つけて通報したけれど、第一発見者なので警察に怪しまれて容疑者にされてしまう。証拠がなくて逮捕はされなかったけれど、結局真犯人が見つからなかったため、周りから白い目で見られたり、被害者の兄から暴行を受けたりと散々な目に遭い、4人の友情も壊れてしまった。それから25年たって、警察が過去の未解決事件を再捜査することになり、この事件が再度脚光を浴びることに。警察ものではあるけれど、メインとなるキャラクターは4人の大学生のほうで、容疑をかけられたせいで辛い思いをした彼らの苦難の人生が非常に興味深かった。青春もののような雰囲気もあり、彼らの友情にジーンとさせられる場面も。警察は無能であてにならず、ボンクラな警官ばかりで腹が立ったけど、切れ者の刑事が颯爽と事件を解決するような、よくあるミステリーではないところが却って面白いと思う。先の読めないストーリーで、警察がこの体たらくでどうやって解決するんだろうと、どんどんページをめくってしまった。事件の真相は衝撃的で、終盤はまさかの展開に驚かされた。初めて読んだ作家で古い作品だけど拾い物だったわ。次作の「迷宮の淵から」もそのうち読んでみよう。

 これはシリーズの1作目だけど、たぶん作者はこの時点ではシリーズ化するつもりはなかったんじゃないかな。カレン・ピリーも脇役の一人という感じの扱いで、特別有能な刑事というわけでもなかった。ドラマでは主役だから、たぶん小説よりも活躍しているんだろうね。私は見ていないけど好評だったらしく、シーズン2も製作予定らしい。

 

私がこの作品に興味を持ったのは↓の記事を読んだからです。

Our picks of the most thrilling screen adaptations

 

 

無断転載禁止 copyright © 2018 BOOKWORM