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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

哀惜 アン・クリーヴス

The Long Call: A Detective Matthew Venn Novel (Matthew Venn series Book 1) (English Edition)

The Long Call (Matthew Venn series Book 1)

  • Cleeves, Ann
  • Minotaur Books

 

 A・クリーヴスはこれまで読んだことがなかったけど、多くのシリーズがドラマ化されていて人気のある作家らしい。ちなみにこの「哀惜」も含め、ドラマ化されている作品は全てAXNミステリーが放映済み。→ 刑事マシュー・ヴェン 哀惜のうなりシェトランドヴェラ~信念の女警部 (「シェトランド」はペレス警部シリーズとして東京創元社が全8作の翻訳を刊行済み。)

 読んで納得。これは批評家が絶賛するタイプの作家だわね。ストーリーもキャラクターも複雑で興味深く、上手いのは確かだけど全体的に地味で玄人好みの作品だと思う。主人公のマシュー・ヴェンはゲイで同性婚をしているというのが珍しいけど、控えめな性格でいつも礼儀正しく真面目な警部で、善い人なんだけどやや面白味に欠けるのよね。派手なところがないぶんリアリティはあると思う。部下の刑事のジェンやロスも同じで、こういう人、実際にいそうだなと思えるようなリアルなキャラクターだけど、どちらも普通っぽくてあまり際立ったところがないし、あまり好感の持てる人物でもないのよね。

 興味深い事件でミステリーは良く出来ているけど、地道に捜査して謎を解いていくのでハラハラするような場面は少なく、もう少し刑事たちが派手な活躍を見せてくれてもいいんじゃないかと思った。それでもつまらないわけではなく、男性の刺殺事件と、障害のある女性の誘拐事件が立て続けに起き、つながりがあるはずなのになかなか関連性を見い出せないという複雑な事件の真相が気になって最後まで読ませるだけのものはあった。自分の好みからすると地味すぎるけど、こういうミステリーが好きな人もいると思う。不快な事件で犯人には怒りを感じたけど、マシューの真摯な仕事ぶりが良かった。

 

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