この作家のデビュー作「その手を離すのは、私」は面白かったけど、これは今一つだったなあ。
主人公のミナはパイロットを目指していたけど訓練途中で挫折し、客室乗務員になった。刑事の夫との間に子供が出来ず、女の子を養子に迎えたけれど、夫が何やら問題を抱えているせいで夫婦仲が険悪になり、今は別居中。勤務している航空会社がロンドンからシドニーへの直行便を就航し、その最初のフライトを担当することになり搭乗すると、言う通りにしないと娘を殺すと脅迫状が届く。
このストーリーの肝は、ミナが愛する娘を盾に脅迫されて葛藤するところだと思うけど、夫との間もギクシャクしているし、娘も養女なので色々と複雑だとか、そういう家族ドラマの部分が何だかイマイチで説得力がなく、あまり感情移入出来なかったのよね。夫の問題も秘密めかしていたわりに月並みだったし。だから「娘を愛している」と言うミナにあまり肩入れできなくて、淡々と読んでいた。
ミナが元々パイロットを目指していたということから、ある程度展開は予想できたけど、終盤はどんどん意外な事実が明らかになって驚かされた。捻りをきかせようと頑張りすぎて、やや無理がある気はしたけど。巻末の解説の人が同じようなハイジャックもののサスペンスとして「座席ナンバー7Aの恐怖」と「フォーリング 墜落」を挙げていて、私はどちらも読んでいるけど、面白さは、座席ナンバー > ホステージ > フォーリング かな。
ところでロンドン - シドニーの直行便て本当にあるのかなと思って調べてみたら、今はまだなくてカンタス航空が2025年に就航予定で準備中らしい。やはり20時間もぶっ続けで飛行機を飛ばすのは大変なのね。