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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

8つの完璧な殺人 ピーター・スワンソン

Eight Perfect Murders: A Novel (Malcolm Kershaw Book 1) (English Edition)

Eight Perfect Murders: A Novel

  • Swanson, Peter
  • William Morrow

 

 こういう「名作ミステリーへのオマージュ」みたいな作品は、基本的にあまり好きじゃないけど、P・スワンソンはお気に入りの作家なので読んでみた。まあ面白かったけど、やはりこれまでの作品と少し毛色が違い、ストーリーにいつものような勢いが無かった気がする。

 主人公のマルコムはミステリー専門書店の経営者で、一癖あるキャラクターだったけど、この作家の描くキャラクター(特に女性)はいつも強烈で面白いので、それと比べるとややインパクトに欠ける気がした。FBI捜査官のグウェンがもっと活躍してストーリーを盛り上げてくれるのかと思ったけど、あまりパッとせず期待外れだった。思うにこの作家は、男性と女性の関係性を興味深く描き、両者が対決するストーリーが面白いのに、本作はそれがなかったのが残念。ミステリーは良く出来ていて、どんでん返しも(いつもより弱い気がするけど)ちゃんと用意されていたし、主人公が挙げている「完璧な殺人」を描いた8作を読んでいなくても問題なく楽しめる内容で普通に面白かったけど、自分の好みとは少し違った。

 昔のミステリーをモチーフにしたストーリーが好きな人には良いと思う。巻末の解説の人は「本書はクリスティーの"アクロイド殺害事件"の再解釈だ」とか、「P・ハイスミスとA・クリスティーという水と油のような2人の作風を合体させている」とか書いているけど、そういう風に色々分析するのが好きな人にはたまらない作品なんだろうね。批評家受けしそうなミステリーだと思う。

 

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