Monkeewrenchシリーズ1作目。古いミステリーだけど、バリー賞とアンソニー賞の新人賞を取って、ベストセラーになっただけのことはありとても面白かった。母と娘が共同で書いているそうで、これが第一作だからか気合が入っていて、とにかく盛沢山な内容だった。(英米のミステリーの賞は、受賞して尚且つ商業的にも成功してベストセラーになっているものは大抵面白いけど、受賞したけど売れ行きはイマイチという作品も多く、そういうのはあまり面白くなかったりするのよね。)
最初はウィスコンシン州の田舎町の教会で老夫婦が殺害される事件が起き、地元の保安官が捜査するところから始まっていたので、この保安官が主役なのかと思いきや、ミネソタ州で起きた別の連続殺人事件の話になり、ミネアポリス市警が出てきて捜査を始めると、その事件はモンキーレンチというコンピューターゲームの会社が作った殺人ゲームを模していると判明する。ミネアポリス市警だけでも普通の警察小説並みにメインの刑事二人組から上司、部下、検死官、女性秘書等、たくさんのキャラクターが登場するのに、それに加えてモンキーレンチの社員5人に、ウィスコンシンの保安官事務所のスタッフと事件の関係者も加わって、登場人物がすごい数に。
キャラクターも内容も盛りすぎで、若干とっちらかっている印象はあるけど、みんな個性的で面白い。モンキーレンチのメンバーには何やら怪しげな過去があるようで興味をそそられたし、市警の刑事たちの日常も面白く、ユーモラスな会話に笑わされた。保安官事務所も田舎町にしてはスタッフがなかなか有能で、こちらも捨てがたい。 (個人的には、美人の部下に言い寄られてタジタジになっている保安官のマイクがお気に入り。) これだけ多くのキャラクターを、ちゃんとそれぞれ個性を持たせて描き分けているのは凄いと思った。事件も最後まで目の離せない展開で、終盤は本当にハラハラさせられ面白かった。
これは全10作のシリーズで4作目までが翻訳されているけど、2作目からは刊行元が集英社に変わっている。別の出版社がわざわざ続きを出すくらい面白いということね。ヴィレッジブックスはどういうわけかロマサスっぽいタイトルと表紙にしているけど、集英社も妙なタイトルをつけているわね。
ちなみにこの母娘コンビ作家は、ミステリーを書く前にはメリンダ・クロス名義でロマンス小説を書いていたそうで、調べたらハーレクインから翻訳も出ていた。女性の作家は売れる前にロマンスを書いてた人が多いわよね。
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このブログは本の感想を書いているという性質上、記事の閲覧数は取り上げる作品の人気度に左右されるので、出たばかりの新作の感想を書けば閲覧数は多くなるし、こういう古い作品だと少な目なのですが、私は別に閲覧数アップに躍起になっているわけではないので、古かろうと新しかろうと自分が面白そうだと思った作品を読んで感想を書いています。このブログを読んでいれば、ネット上で全く話題になっていないけど面白い作品に出会えるかもしれませんよ(笑)。新作だから面白いというわけではないし、古い作品の中から傑作を発掘するのも一興です。私はSNSはステマばかりで信用できないと思っているので、いつも自分で独自に面白そうな作品を探して読んでます。