アメコミ原作者兼小説家のG・ルッカが、自身のコミックをノベライズしたシリーズの1作目。元がコミックだし表紙がイラストだから、ラノベっぽい内容かと思ったら、意外にもかなり硬派なスパイものだった。
イギリスの特殊作戦部隊の女性エージェント、タラ・チェイスが、イスラム原理主義者のテロリストと戦うストーリー。サウジやイスラエルの情勢や、テロに対処する各国の政治的な立場もきちんと書かれていて、思った以上に本格的なスパイ小説だった。真面目に書かれているぶん、序盤は説明的な描写が多く、あまり話に引き込まれなかったけど、チェイスが活躍し始めるとだんだん面白くなっていった。応援もなくたった一人でテロの首謀者を暗殺するという無謀な作戦を無茶ぶりされて、決死の覚悟で任務に向かうチェイスが素晴らしくカッコいい。何とか作戦を成功させた時点でまだ半分くらいなので、この後何が起きるんだろうと思っていると、その後の展開が凄かった。
あれだけ困難な任務をやってのけたというのに、政府の都合でとんでもない立場に追いやられてしまうチェイスが気の毒すぎる。政府の決定には怒りを覚えずにいられなかった。絶対絶命の状況に陥りながらも、そこから起死回生を図るチェイスが本当に凄くて、後半はかなり面白かった。
ところで、先日読んだこの作家の「わが手に雨を」は比較的読みやすい文章だったのに、どういうわけか本作は文章が直訳調で読み難かった。同じ翻訳者なのに何故だろう。締切が迫っていて、やっつけ仕事になってしまったんだろうか??
こちらがコミック↓
(追記)
調べてみたら、これもリドリー・スコット監督が映画化するという話が一応あったらしい。先日見たNetflixの新作映画「ハート・オブ・ストーン」は、この作家がストーリーを担当したスパイものだけど、内容がちょっとマンガっぽくて、いかにもアメコミ作家が考えたストーリーという感じがしたのよね。この「天使は容赦なく~」のほうが本格的なスパイ映画になりそうだけど、これから製作される可能性は低いかなあ。