ロマンス小説感想日記

ロマンス&ミステリー小説感想日記

海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

想いはベールに包まれて メアリ・バログ

 

 Westcott シリーズ3作目。ヒストリカル・ロマンスで顔に傷のあるヒーローの話なら多いけど、本作は顔に酷いあざのあるヒロインの話。顔の左半分がほとんど紫色で、人前に出るときは顔をベールで隠しているという。ヒーローのほうは完璧な容貌の美男子だというから、ロマンス小説としてはかなりハードルの高い設定だけど、流石はメアリ・バログ、感動的なストーリーに涙腺を刺激されたわ。

 女性で生まれつき顔にそれほど酷いあざがあったら人格形成にも影響するだろうから、屈折した性格になっても無理はないと思う。他人と距離を置き、友達もいない気の毒なヒロインだけど、伯父の事業を継いでガラス工場を立派に経営している女実業家でお金持ちなので、裕福な花嫁を探している困窮した紳士となら顔にあざがあっても結婚できるかもしれないと、候補者を選定しリストを作成することに。その候補者の一人が荒廃した伯爵領を相続して領地を建て直すための資金を必要としているヒーローで、ヒロインのほうから結婚を提案する。ヒーローはハンサムなだけでなく真面目で誠実な人柄の優しい男性で、ヒロインが恋するのも当然だわね。自分は伯爵夫人になるのは無理だと悟り、傷ついた心を隠して提案を撤回する彼女がいじらしかった。

 優しい叔母夫婦に引き取られる前のヒロインの境遇があまりにも可哀想で、読んでいて辛かった。幼少時代の辛い経験から心がひどく傷ついているヒロインが、ヒーローの一族の人たちの親切に触れ、勇気を出して人前に出ていくようになるのが良かった。是非ともヒーローに愛されて幸せになってほしいと思える素敵なヒロインで、ヒーローが彼女を知るにつれ惹かれていき、ゆっくりと育まれるロマンスがとても良かった。ヒロインと弟の再会が本当に感動的で泣かされたわ。やはりメアリ・バログは上手いわね~。

 

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