この作家のデビュー作「消えた子供」は随分前に読んだというか、読み始めたものの、やたらと登場人物が多く、あまり興味の持てないキャラクターの日常がだらだらと描写されていて、どうにも面白くなくて1/4くらいで読むのをやめてしまったのよね。でもこちらは評判通りの傑作だった。デビュー作から本作の間に翻訳されていないのが数作あるからその間に成長したのかしら。登場人物が多めなのは同じだけど、心に傷を抱えた興味深いキャラクターばかりで最初から物語に引き込まれた。精神が不安定な母親に代わって5歳の弟の面倒を見ている13歳の少女ダッチェスが健気で泣ける。弟のロビンも可愛くて、この不幸な姉弟に同情せずにいられなかった。「拳銃使いの娘」や「父を撃った12の銃弾」と似たようなテイストだけど、それらよりも本作のほうが面白かった。
ミステリーと人間ドラマがうまく融合したストーリーで、とても読み応えがあった。ダッチェスのパートはヤングアダルト小説風だし、ミステリーに法廷サスペンスも含まれていて盛沢山な内容で飽きさせない。ウェット過ぎずドライ過ぎず、絶妙な匙加減の語り口も上手い。過去の事件から立ち直れずにいる大人たちの侘しい人生が哀しく、中でもパーキンソン病の初期症状が出始めている警官のウォーカーが親友のために苦悩する姿に胸を打たれた。愛や友情の喪失を描いた感情を揺さぶるストーリーが素晴らしい。ミステリーとしても面白く、結末も上手くまとまっていたと思う。