ロマンス小説感想日記

翻訳ミステリー&ロマンス小説感想日記

海外ミステリーとロマンス小説のブックレビュー

受験生は謎解きに向かない ホリー・ジャクソン

 

 A Good Girl's Guide to Murder シリーズの短編。原書は2作目と3作目の間に刊行されていて、1作目の前日譚にあたる内容だけど、先に長編を読んで登場人物を把握した上でこれを読んだほうが楽しめると思う。

 主人公のピップが友達の家で開催された殺人ミステリーのゲームに参加し、ゲームの登場人物に扮して犯人を解き明かすというストーリーで、6人の参加者が本人の名前で書かれている時もあれば、ゲームの登場人物の名前で書かれている時もあり、シリーズを読んだことのない人には紛らわしくてわかりづらいと思う。このシリーズのファンの人へのボーナス的なノヴェラなので、いきなりこれを読んでもあまり楽しめないのではないかと。

 ゲームは1920年代のスコットランドの孤島にある富豪の老人の邸宅で殺人事件が起きるという設定で、短編にしては凝った内容のミステリーだった。ピップが扮する富豪の姪も興味深いキャラクターで、ピップ本人に通じる有能さがあり良かった。仲良しの高校生たちがそれぞれの役になりきってゲームをしている様子が和気藹々で、こんなゲームに参加してみたいなあと思わせる楽しいストーリーだった。これはこれで面白いけれど、短編なのでそこまで過度な期待はせずに読むのが良いかと。