"このミステリーがすごい!"で3位に入っていたので、きっと凄いどんでん返しがあるに違いないと思い読んでみたけど、何だか予想と違った。ベテラン作家らしいので、正統派のミステリーかと思いきや、アメコミっぽいというか(ヒロインがバットマンみたいだと思った)ラノベっぽいストーリーで、あまり重厚さはなかった。まあ読み易くて悪くはなかったけど。
主人公のレイチェル・サヴァナクは大金持ちの女相続人で、何やら悪人に制裁を下す必殺仕事人のようなことをしているらしい。冷酷な暗殺者の顔を持つ興味深いアンチヒロインで、意外性があり良かった。彼女の秘密を暴こうとする新聞記者のジェイコブは、上昇志向の強いタイプかと思ったけど、意外とヘタレで憎めないところがあり、レイチェルの手のひらで踊らされているようで気の毒だった。取材しているうちに事件に巻き込まれて命を狙われたり、災難続きで目が離せず面白かった。以下、多少ネタバレしているのでご注意を。
レイチェルの謎めいたキャラクターがこのストーリーの目玉だと思うけど、彼女の正体は割と最初からバレバレだったような。章の合間に彼女の親戚らしき女性の日記の文章が挟まれているんだけど、それを読むとレイチェルは少女の頃からとんでもなく残酷なわがまま娘だったようで、そんなサイコパスみたいな女が主役のはずないよねぇ、シリーズものだし、・・・あ~そういうことか、と4分の1も読まないうちにレイチェルの正体は察しがついてしまった。それでも次々と恐ろしい殺人が起き、そのつながりが徐々に明らかになっていくストーリーには引き込まれたし、最後に黒幕が誰かわかった時には驚かされた。ジェイコブは、最初はしつこくて嫌な記者だと思っていたけど、意外と人間味があり、女性に振り回される役回りの不憫なキャラクターで気に入った。最後のほうでレイチェルが実は彼のことを好きだったと判明して驚愕!(笑) えぇ~、全くそんな素振りは見られなかったし、結構彼をいたぶってたよねぇ。レイチェル、ツンデレにも程があるよ。