よくあるミリタリー・サスペンスで、特別目新しいところはないけれど、読みやすく面白かった。主人公のライアンは元軍人で、退役後に誘拐の被害者の救出を専門とする会社を立ち上げ、困難な事件をいくつも解決してきたけれど、政治家の娘がロシアンマフィアに誘拐された事件で何者かに嵌められてミッションは失敗、多数の犠牲者を出したせいで有罪になり連邦刑務所で服役していた。ところが突然釈放されることになって刑務所を出た途端に命を狙われる。刺客をかわしながら、私立探偵の女性の協力を得て昔の事件で彼を陥れた者を突き止める・・というストーリー。
私は別にガンマニアではないので、この手のミリタリーもので銃器とかの説明が詳しすぎるとウンザリするのだけれど、この作品はそういう説明的な描写は最低限で、とにかくテンポが良く、映画を見ているような臨場感のある文章が良かった。アクション満載のスピード感のあるストーリーで退屈する暇がなく、多少ツッコミどころがあっても気にならずサクサク読めた。強いて言えばキャラクターがステレオタイプすぎるのが欠点で、もう少し特徴を打ち出してほしかったかな。もちろんアクションものの主役だから、恐ろしい敵に狙われても絶対に死なない(w) 凄い能力の持ち主なんだけど、内面的なものがあまり書かれていないから人間的な魅力がいまひとつ感じられなかったのよね~。私立探偵のハーロウは資金面とIT関係でライアンを助けていて、このポジションに女性を持ってきたのは興味深いと思うけど、彼女も活躍していた割にちょっと印象が薄かったような。シリーズ1作目なのでキャラが立ってくるのはこれからかなぁ。
作家は元軍人で、軍隊時代の経験を活かして小説を執筆しているらしい。海軍士官学校を卒業して8年間軍務に就いていたとのこと。(ちなみにアメリカの士官学校は卒業後に軍務に就くことが前提で学費が無料になっているので、任官拒否すると高額な学費を全額支払わなければならないため、拒否する人は滅多にいない。)士官学校を出ているならエリートだったろうに、軍を辞めて作家になったのね。ベストセラー作家になれて良かったわね。