ロマンス小説感想日記

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海外ミステリー、ロマンス小説のブックレビュー

禍根 パトリシア・コーンウェル

禍根(上) (講談社文庫)

禍根(上) (講談社文庫)

  • パトリシア・コーンウェル
  • 講談社
禍根(下) (講談社文庫)

禍根(下) (講談社文庫)

  • パトリシア・コーンウェル
  • 講談社
Autopsy: A Scarpetta Novel (Kay Scarpetta Book 25) (English Edition)

Autopsy (Kay Scarpetta Book 25)

  • Cornwell, Patricia
  • William Morrow

 

 スカーペッタ シリーズの5年ぶりの新作。5年も間があいたのは作者がその間、NASAのサイバー犯罪捜査官(?) が主役の別のシリーズ(未訳) を書いていたからで、本作でスカーペッタの担当する事件が何と宇宙空間にまで及ぶすごい話になっているのは、その影響かなと。そのCaptain Chase シリーズは不評だったらしく2作で終わっているので、もしかしたらそちらのシリーズで使おうと思っていたプロットをスカーペッタ シリーズに流用したのかもしれないな。

 でもその宇宙がらみの事件が興味深くて面白かったのは確かで、そっちの事件をメインに書いてくれたら良かったのにとちょっと思った。スカーペッタが大統領との会合に呼ばれるほど出世していて驚いたわ。壮大な事件のように見えて、結末はやや尻すぼみだったけど、まあ面白かった。新任の検屍局長スカーペッタが職場で傲慢な部下に悩まされたり、出世しか頭にない上司から圧力を受けたり、人間関係に苦労しすぎなのがもどかしかった。

 P・コーンウェルは検屍官が主役のこのシリーズをかれこれ30年以上も書き続けているだけあって、検屍関係のネタは芸が細かくて面白い。検屍局の様子も詳細に描かれていてリアリティがある。中国発祥のオピオイド系の新しいドラッグが出回り始めてアメリカにも上陸しているとか怖いわ~。3Dプリンターで皮膚や臓器を作る研究が進んでいるというのにも驚いた。この原書のcopyrightは2021年だけど、既にGpt-3に言及していたわね。GPTってgenerative pretrained transformer の略なのね。

 このシリーズもamazonがドラマ化予定なので、また注目が集まりそう。(主役のニコール・キッドマンと、ジェイミー・リー・カーティス以外のキャストはまだ決まっていないみたいだし、見られるのはだいぶ先だろうけど。)私はずっと昔に最初の5~6冊を読んだ後、長いこと遠ざかっていたので、そこまでこのシリーズの熱心な読者ではないけど、次作が翻訳されたらまた読もうと思う。amazonのドラマ化と言えば、このシリーズよりもジェームズ・パタースンのアレックス・クロスのシリーズのほうが早く見られそう。あのシリーズは昔、モーガン・フリーマン主演で映画化されたのを見た覚えがあるけど、小説は読んだことがないのよね。アレックス・クロスもスカーペッタに負けないくらい長く続いてるシリーズだけど翻訳が途中で止まっている。スカーペッタのシリーズは初期のほうが面白くてだんだんつまらなくなっているという評判なのに対し、アレックス・クロスは割と面白さが持続しているみたいなので、ドラマ化されることだし翻訳を再開すればいいのに。

 

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