これも初期のMIRA文庫。この作家は初めて読んだわ。アレックス・カーヴァやエリカ・スピンドラーと比べると知名度低いけど、割と面白かった。
ヒロインの素性が謎めいていて、どういう人物なのかよくわからないまま話が進んでいくのが斬新で良かった。7年間行方不明だった令嬢のふりをして名乗り出て、遺産を相続しようとするのは明らかに胡散臭い行動だけど、その裏にどんな理由が隠されているのか気になって謎を解きたい気持ちにさせられる。
ヒロインは過去に精神を病んでいて少々妄執的な感じはするけど、そういう脆さのあるキャラクターがなかなか良いと思った。ヒーローはヒロインのことを疑う立場だけど、割と簡単に彼女に夢中になってしまったのでちょっと物足りない。もっと疑心暗鬼になって葛藤したら面白いのに。まあ最初からお互い惹かれあって下半身が反応してしまうのはロマサスらしい展開ではあるけど。
サスペンスに関しては、真犯人を意外な人物にしたかったのはわかるけど、これは後から無理矢理こじつけたような、わざとらしさを感じた。ヒロインの正体も、真犯人が別にいるということも割と早い段階でわかるから、そこまでの意外性はなかったな。派手さはなく、衝撃のサスペンスというわけではないけど、地味に面白いストーリーで悪くない作品だったと思う。

- 作者:ジャスミン・クレスウェル
- メディア: 文庫

- 作者:Cresswell, Jasmine
- 発売日: 2003/04/18
- メディア: ペーパーバック